反対に、煽る側の特徴と原因には、次のようなものがある。
1.時間的余裕のないドライバー
一番シンプルな煽り運転発生の原因になるのが、「急いでいる」という理由だ。
約束の時間ギリギリという時、人は法定速度で走る前のクルマにさえもイライラすることがある。が、原因が単純だと解決方法も単純で、この場合、時間に余裕を持って自分が早めに出発すればいい。これで全てが解決する。
2.高級車に乗った凡人
あくまでも筆者の個人的見解なのだが、煽り運転は、「凡人」が「高級車」に乗ると起きやすいように感じる。
“中身(=ドライバー)”とクルマの外見に差のない「ホンモノの高級車乗り」らは、金・時間・心に余裕があるため、運転も自然と余裕を持ったものになるのだが、背伸びして高級車で乗り飾った「凡人」は、その「勘違いなグレードアップ」に気を大きくし、前のクルマを煽ることで、必然的に周囲から注目を浴びるシチュエーションを作り上げて、目立とうとするのだ。
こう考えると、高級車の煽り運転ほど格好悪いものはない。筆者は勝手に「煽り運転をする高級車の“中身”は、実に大したことない」と思っている。
3.行き過ぎた正義を振りかざすドライバー
本来、安全確保のために存在する「交通ルール」だが、昨今、この存在に固執しすぎる一部のドライバーの「行き過ぎた正義感」によって、煽り運転が生じているように思えてならない。
正義感が強すぎるドライバーは、自分が優先である状況の中、相手の無理な割り込みや、「お礼の合図」がないなど、ちょっとしたルール・マナー違反でも見過ごすことができず、追いかけて「罰」を与えたくなるのだ。
彼らによる煽り運転は、日本がルールやマナーに非常に厳格な国だからこそ起こり得ることだと考えられる。
実際、日本よりも比較的気性の荒い人が多く、ルールやマナーに幅を持たせるニューヨークや韓国では、ものすごいスピードで走ったり、車内で汚い言葉を連呼したりするドライバーは数知れないものの、煽り運転においては、日本ほど多くない。
そう考えると、「行き過ぎた正義」や「自分にあるはずの優位性の侵害」から起きる煽り運転は、かつて日本で問題になった、店員に土下座を強要するクレーム客の心理に似ているのかもしれない。
4.悪質ドライバー
煽る側には、先述通り「運転弱者」を物色したり、「煽り」そのものを楽しむ悪質なドライバーがいる。前出の東名高速死亡事故の容疑者も、まさにこの部類だ。
他ドライバーのミスやマナー違反などに難癖をつけて煽るのだが、彼らの本当の動機は、日頃に溜めたうっぷんを晴らしたり、“快感”を得るためだったりするため、とにかくしつこい。
こうした悪質ドライバーには、今回の東名死亡事故をきっかけに厳罰化された法律をもって、積極的かつ厳しく取り締まってもらいたいところだ。
このような煽り運転に巻き込まれない方法として、ルールやマナーを守らない周囲のクルマに寛容になりつつ、自分はそれらをしっかり守ることが、1つの打開策になる。
また、ドライブレコーダーの取り付けは、トラブルになった際の証拠になるだけでなく、搭載している旨を知らせるステッカーをクルマの後部に貼っておくことで、無用なトラブルを未然に防ぐこともできるため効果的だといえる。
最近では安いものだと1万円を切るものも販売されているが、取り付けが難しい場合、このステッカーを貼っておくだけでも、後方ドライバーにはプレッシャーになるはずだ。
それでも悪質なドライバーに煽られたら、車外に出たり、煽り返したりせず、とにかく道を譲り、やり過ごすことが重要だ。執拗に追いかけられる場合は、その足で警察署や交番に向かえば、大抵のドライバーは去っていく。
先述通り、東名高速での事故を受け、悪質な煽り運転など、危険運転に対する罰則が強化されるようになったが、その後も道路では依然として「危険な光景」をよく見る。
年末年始、久しぶりに長距離や渋滞の中を運転することで、イライラする、またはさせるドライバーも増えるだろうが、皆が帰るべき場所に帰れるよう、各人思いやりを持って安全運転に心掛けてほしい。
【橋本愛喜】
フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。