ほとんど議論されないまま今回の改正案が通ってしまったが、事実上の移民受け入れに警鐘を鳴らす外国人もいる。多様化どころか「ますます差別が激しくなる」と予想するのは、Eさん(アメリカ人・35歳・男性)だ。
「英語教師をやっていても、日本じゃガイジン扱いされて下に見られる。それが低賃金・単純労働だけやらされている人なら、なおさらそうなるんじゃないかな。やりたくない仕事を押しつけられる人が差別されるのは、歴史が証明している」
一方、反対に劣悪な労働環境が変わるキッカケになると予想するのは、Mさん(デンマーク人・33歳・女性)。
「日本人はいくら残業させられても文句言わないけど、外国人はハッキリ断る人が多い。結局、給料を上げるか待遇をよくするかしないと、働いてくれないんじゃない? 実際、今でも逃げ出す人がたくさんいるんでしょう? 外国人を大勢日本に入れて無理矢理働かせたら、絶対にストライキとかデモが起きるはず」
こうした未来が現実になった場合、はたして日本はどのように対応するのか? 残業や過労死が常態化している働き方がついに変わるとなれば、先行きは明るいだろうし多様化も進むはずだが、その前に「外国人によるストやデモ」によって、日本人が怒りの矛先を本来向けるべき雇用主ではなく外国人に向けるようになる可能性も否めない。だとすれば、社会の分断が進んでしまう結果にも繋がるだろう。
さらにそうした抗議の声を、あたかもテロのように報じられ、警察機関が力で不満を抑え込むような事態となれば、まさにディストピアだ。前出のJさんは次のように語る。
「溺死や凍死する人が出ているなんて、まともじゃない。そんな状況で経営者に逆らうのは、単純に生きるためでしょう。自分の命を守るためなら、暴力を振るう人だって出てくるはず。安倍はトランプが大好きだから、無理矢理家族から引き離したり、強制送還するようなケースが増えると思う」
強行採決寸前までデータは隠されたままで、ほとんど議論されずに採決されてしまった出入国管理法。在日外国人たちのほうが危機感を募らせているのは、何とも皮肉な話だ。
<取材・文/林泰人>