激化する米中貿易戦争。トランプが恐れる中国の国家戦略「中国製造2025」

斎藤武宏

習近平は最近、「自由貿易推進」「反保護貿易」を頻繁に口にする。あたかもグローバリズムの信奉者だが、真意はどこにあるのか 写真/Avalon/時事通信フォト AFP=時事

 米中間選挙は共和党の実質的勝利に終わった。トランプ大統領が仕掛ける米中貿易戦争はさらなる激化が予想され、世界経済への影響は必至の状況だ。そんな経済トピックを一挙紹介する!

米中貿易戦争が激化するなか、日中雪解けが意味するのは?

 中間選挙はトランプ大統領率いる共和党の実質的勝利に終わり、対中貿易戦争は先鋭化の兆しを見せている。7月に開始した総額2500億ドルの制裁関税だけでなく、中国企業による対米投資の制限や米国製品の輸出管理を強化。だが、9月の物品関連の対中貿易赤字は402億ドルと過去最大を記録し、むしろ拡大している。

 米中貿易戦争の行方を、東京福祉大学国際交流センター長で、最新刊『「中国製造2025」の衝撃』(PHP研究所)を12月22日に発売する遠藤誉氏はこう読み解いた。

「米国は4月、中国の通信機器大手のZTEとファーウェイに対して、米サプライヤーとの取引を7年間禁じる制裁を課しました。中国を代表するハイテク2社を米国から締め出す“ライバル潰し”との国内報道もあったが、本質を見誤っている。注目すべきは、中国のハイテク製品は半導体をはじめとするキーパーツの9割を輸入に依存している事実です。習近平政権はこのままでは彼が目指す『中華民族の偉大なる復興』は成し得ないと考え、’15年に製造業高度化の国家戦略『中国製造2025』を策定し、’25年までに半導体などキーパーツの7割を国産化することを目指している。問題なのは、半導体などのコア技術は汎用性が高く、軍事や宇宙開発にも転用できることです。『中国製造2025』が完成した暁には、米国は世界の覇権を握れなくなってしまう……。トランプ大統領は中国の思惑を見抜き、危機感を抱いた。そして先手を打って仕掛けたのが貿易戦争なのです」

 一方、対中関係が悪化していた日本は、7年ぶりとなる日中首脳会談を開催。前回は安倍首相と目さえ合わせなかった習近平主席が笑顔を振りまき、会場には日の丸がいくつも飾られ、両国に融和ムードが漂いはじめた。

「中国の低姿勢は、半導体を日本から輸入したいから。ただ、一帯一路構想のためでもある。中国は’16年の『宇宙白書』で、一帯一路の沿線国で宇宙産業分野での協力強化を打ち出したが、欧米から見れば宇宙を支配する試みで、非常に警戒している。中国は一帯一路で、沿線国に開発した港湾を租借したり、援助という名で借金漬けにしたりで、特に欧州は懐疑的に見ていた。だが、今回の会談で大筋合意したように、間接的とはいえ一帯一路に国際的信用のある日本が参加すれば、欧州の目も変わる。日本は利用されたのです」

 米中貿易戦争の激化は、やはり避けられないのか。

「米中がハイテクのコア技術で激しく競い合っている現状で、『米国を再び偉大な国に』と訴えるトランプも、『中華民族の偉大なる復興』のために『中国製造2025』にすべてを賭ける習近平も譲歩などしない。今後、米国の強硬姿勢はときに激しく、ときに軟化することもあるでしょうが、それはトランプのキャラクターによる変数に過ぎない。半導体を巡る戦いという軸がぶれることはないでしょう」

 実際、米国は今後、国際サプライチェーンから中国を切り離す「デカップリング」まで視野に入れている。貿易戦争の“本番”はこれからなのだ。

取材・文/斎藤武宏

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