「上」の不正で閉ざされる末端の叫び。元町工場経営者が思う、日本のものづくり業界の衰退

橋本愛喜

町工場経営者にのしかかるさまざまな問題

 父がこの仕事を始めて約30年。その途中、彼が病に倒れたことで、急遽2代目として工場に入社した筆者は、自分なりに約10年、この業界でジタバタもがき過ごした末、2013年の秋、自らの手で工場を閉めた。

 閉鎖に至った原因は1つではない。ましてや、今回のゴーン氏の不正が直接的な原因になったわけでもない。

 現在、世間で騒がれている「跡継ぎ問題」、「外国人労働者問題」、「下請けいじめ」に、今でいう「働き方」など、当時から本当にたくさんの問題があの工場や製造業界には蔓延っていたため、ゆっくり時間を掛けて、自分なりに「継続」と「閉鎖」それぞれの未来を何度もシミュレーションしてみたのだが、結局、こうした問題が山積する中、工場の体力も限界ギリギリの状態で、最盛期から半値にまでなった工賃に頭を抱えながら、目に見えて廃れていく日本の製造業界に今後も身を置き、最低10年はかかる職人育成をやっていく自分を、最後まで想像できなかったのだ。

 こうして「製造」について書こうとするのには、恐らく根底に自分の手で父の工場を閉めた「負い目」があるのだと思う。が、その反面、正直なところ、度重なる日本の製造業界の不祥事に、あの頃の自分の判断は間違っていなかったなと思ってしまう部分も大きい。

不正や改ざん。製造業のプライドはどうした

 昨今の日本の製造業界から聞こえてくるのは、東芝、日産、三菱マテリアル、SUBARU、神戸鉄鋼など、業界トップの企業らによる「不正」や「改ざん」といった、プライドの有無どころか、その「倫理観」をも疑いたくなるようなニュースばかりである。

 世界の誰もが知る日本のブランド企業が、次々に海外企業へ身売りされてゆく中、全世界に広がったタカタ製エアバッグのリコール問題をはじめ、イギリスでは日立製作所が製造した高速鉄道車両が初日に水漏れを起こし、台湾では日本車両製造の鉄道が事故起こすなど、「メイド・イン・ジャパン」の信頼を揺るがす事象が海外でも起き始め、アメリカの大手メディアからは『どうした日本企業』と大きくタイトルが打たれた記事が出される。

 そんな中、大規模なコストカットで業績を回復させた大手企業の数字を並べて「日本のモノづくりは衰退してなどいない」と主張する一部エコノミストらの見解や、安い人件費を求めて移転した海外工場で「メイド・イン・ジャパン」を製造し、事故や不祥事があれば「海外工場で生産されたものだから」で処理する業界の生ぬるさは、技術もろとも製造業界から追いやられた多くの国内の元工場マンや元工場経営者らには、大変白けて映るのだ。

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「上」の不正で未来と技術を閉ざされる町工場

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