パチンコ店内ATMに警察庁担当者も苦言。引き出し額制限機能も依存症対策に逆効果

「ATMを探して外出し、我に返る現象」を阻止したい店の思惑

 パチンコ店からATMを撤去したとて、パチンコ店から一歩外に出れば、コンビニATMが溢れかえっている。そもそもコンビニを併設している大型のパチンコ店も数多くある。パチンコ店に併設しているコンビニに、ATMが複数台設置されているのもざらだ。  多くの店舗がそういう状況にあるにも関わらず、なぜパチンコ店はATMを設置し、なぜ警察庁は強力にATMの撤去を求めるのか。  パチンコ店側から言えば、遊技に熱を上げている客の「頭を冷やしたくない」という本音がある。負けが込み当初の軍資金が尽き、「あと1万円!」と勇んでコンビニATMに向かう際、町の人波の中で夜風に当たれば、ふと「これ以上使ったらやばいかも」と我に返る瞬間がある場合もある。  この心理はパチンコだけではない。スマホゲームであろうとも、ふとした瞬間に、熱が冷めることがあるだろう。パチンコ店が演出する非日常性から、パチンコ台や遊技から、物理的な時間や距離を置くということは、実はとても大事な事なのだ。  店内ATMを批判する側も、近隣のATM等から容易に出金できる環境がある事は十分に承知している。その上で、やはりパチンコ店内にあるATMには、客の利便性とは異なる、店側の、悪意とは言わないまでも、スケベ心が投影されてしまっているし、それが鼻につくのだ。  今、ギャンブル依存問題が、これほどまでに活発に議論されている中、パチンコ店内のATMは、依存促進の象徴になっている。理屈や建前ではない。象徴だ。象徴となるものは、そのものが本来持つ以上の意味や価値を持ってしまう。  あえて、パチンコ業界の立場から言うのであれば、店内ATMを撤去する事によりお店の売上が下がろうが、遊技機の稼働率の低減を招こうが、店内ATMをすぐにでも無くすほうが得策だ。 <文・安達 夕 @yuu_adachi
Twitter:@yuu_adachi
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