NAFTAから四半世紀。新NAFTAが3か国合意に至った背景とは

photo by WHITEHOUSE via flickr(Public Domain)

 11月末にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開催されたG20を利用して米国、メキシコ、カナダの3か国はNAFTAに代わる新たな貿易協定に署名した。新協定は3か国のイニシャルを取って「USMCA」と名付けられた。これはあくまで英語圏での呼称で、スペイン語圏では「T-MEC」と呼ぶことになった。Tratado de México, EEUU y Canadáのそれぞれイニシャルを取ったものである。  1994年にNAFTAが施行された時はブッシュ(父)大統領、サリナス大統領、マルルーニー首相が署名した。奇しくも、T-MECが署名されたその日にブッシュ元大統領が亡くなったのである。  NAFTA施行から25年が経過した今、3か国の貿易及びサービス取引は4倍に増え1兆2000億ドル(132兆円)の市場に拡大している。その結果、メキシコの米国への輸出は全輸出量の80%、同様にカナダは76%となって米国への依存がより高まっているのも事実である。(参照:「El Pais」)

米国がメキシコにした「配慮」

 今回の署名に結び付ける為、米国はメキシコに相応の配慮をしたという。メキシコのエンリケ・ペーニャ・ニエトは大統領としての任期が12月1日までとなっていたからである。その日、新大統領になるアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(アムロ)への職務引継ぎが予定されていた。その為、エンリケ・ペーニャ・ニエト大統領への最後の花道として用意できるのは11月30日が彼が署名できる最後の日となっていた。それにアムロも合意し、またトランプ大統領もその線に沿ってカナダとの合意に圧力をかけていたのである。  米国とメキシコとは8月27日に合意に至っていた。ところが、トランプ大統領が署名できるには合意内容を米国議会に提出して、その審査に60日が必要とされていた。そのため、3か国が署名できるためには米国とカナダは9月30日までに合意に至っていなければならなかったのである。そこでカナダは乳製品の市場を米国の前に譲歩して両国は9月30日夜半に合意に達したというわけである。  このような推移があって、11月30日にトランプ大統領、ペーニャ・ニエト大統領、トルド首相の3者による合意署名が交わされた。トランプ大統領がNAFTAの見直しを要求して始まった3か国による交渉から、実に13か月が費やされた後のことであった。
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陰の功労者の「あの人」にメキシコから勲章!?
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