さて、こんな土壌汚染の歴史や背景を頭の中で反芻しながら現実逃避をしなければならいほどの臭気が立ち込めていたのが今回の当該物件。
とにかく臭い。周辺一帯が猛烈に臭い。日常生活が困難なレベルで臭い。どうやら臭気は道路脇の側溝から漂ってきており、その臭いは各家庭のトイレ排水がそのまま流されているのではと感じられるほど。
物件自体は小洒落た新興住宅地の角地で築年数も6年ほどと浅く、目立った痛みも特筆すべき瑕疵もないのだが、窓やドアを開けていられないほどに周辺が臭い。
不思議なもので債務者は既にこの臭いに慣れてしまっている様子。
「やっぱり気になります? 2年くらい前から突然臭くなって、何度か調べてくれてるみたいなんですが、原因がわからないみたいで」
確かに家の中に入ってしまえば苦にならないほどには落ち着くのだが、それでも約2年間周囲がこの状況というのは異常と考えざるを得ない。
もちろんこれらの臭気は現況報告として記されることになり、通常であればその後の進展などが追われることも無いのだが、土地確認のため不動産鑑定士さんが訪ねた役所での雑談から、この強烈な臭気の原因が判明することに。
今から2年ほど前、付近に建設された飲食チェーン店に施工ミスがあり、浄化槽の内容物がそのまま側溝に流れ込んでいたのだ。さらにこの汚水が近隣の個人クリーニング店から出る大量の廃水と合流する形で広範囲に広がっていたため、特定作業に難航していたというもの。
ちなみに土地の個人間取引で土壌汚染に最も深刻な被害を与えるものが、こうした古い個人クリーニング店だ。クリーニング店が適切な廃水処理を行なっていたとしても、老朽化などで有害物質が漏れ出していることが少なくない。
それに次いで土壌汚染問題が多いとされるのが、古くからの町医者。過去には医療廃棄物を敷地内に埋めるものが少なくなかったためだ。
このような土地はもちろん値下げの対象となり、購入者への報告義務も生じる。
購入後に地盤をコンクリートで固めてしまえば問題もないだろうが、庭を設け家庭菜園を楽しみたいという場合には、注意が必要かもしれない。
【ニポポ(from トンガリキッズ)】
2005年、トンガリキッズのメンバーとしてスーパーマリオブラザーズ楽曲をフィーチャーした「B-dash!」のスマッシュヒットで40万枚以上のセールスとプラチナディスクを受賞。また、北朝鮮やカルト教団施設などの潜入ルポ、昭和グッズ、珍品コレクションを披露するイベント、週刊誌やWeb媒体での執筆活動、動画配信でも精力的に活動中。
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