英国のEU離脱にスペインが最後まで反対していたが土壇場で翻意した複雑な事情

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スペイン南海岸の半島に位置する英領ジブラルタルのシンボルとも言える「ザ・ロック」。Brexitで領土問題が再燃 photo by pixabairis via pixabay(CC0 Public Domain)

 11月25日にブリュッセルで開かれた欧州連合(EU)の臨時首脳会議で英国のEUからの離脱が「離脱協定案」と「政治宣言」の内容合意で成立した。これによって英国のEUからの離脱が承認されたことになる。来年3月29日の離脱に向けて、英国議会での承認を待つだけとなった。しかし、それが一波乱ありそうな気配である。

Brexitで再浮上した「領土問題」

 今回の合意に至るまでの過程で、スペインはジブラルタルの問題について「離脱協定案」と「政治宣言」の中にそれが明文化されていないことに首脳会議の前の次官クラスの会議で気づき、スペイン政府は急遽その明文化を首脳会議が開かれる前までにしておくことをEU側に要求していた。そして仮に、それが首脳会議の前までに実行されていない場合は、離脱協定への合意はしないという姿勢をスペインのペドロ・サンチェス首相が明らかにしていたのである。  もともと、スペイン南端に位置するジブラルタルを、スペインは歴史的に自国の領土だとして領有権を主張している。しかし、ジブラルタルは、スペインが王位継承戦に巻き込まれた隙間の1704年に英国に占拠され、1713年のユトレヒト条約で英国のジブラルタル統治が認められて以来、今もEUの中にあってジブラルタルは唯一英国の植民地となっている。  そんな領土問題を孕んだジブラルタルについて、英国のEUからの離脱でスペインがEUに要求していたのは、EUと英国との交渉でジブラルタルが盛り込まれた合意には事前にスペインの同意を必要とするという取り決めであった。それを「離脱協定案」と「政治宣言」に明文化することを以前より要求していたのである。  ところが、EUのミッシェル・バルニエ首席交渉官が英国との最初の交渉の段階からそれを明確にした交渉をすべきであったが、実際に彼がとった策はそれを曖昧にしておくことだったという。それを加えれば、他のEUの加盟国の間で英国と問題を抱えた国からも色々と要求して来る可能性があると判断していたようである。よって、必要とあらばフランスが英国の領海で漁業ができることを付属条項に基づいて合意したように、ジブラルタルについても別枠で付属事項として明文化するようにすれば良いと考えていたようである。  しかし、ジブラルタルはスペインが抱える歴史的問題であり、英国が非合法的に占拠しているという考えであることからスペイン政府は付属事項で明文化して済むような問題ではないと考えていた。  なぜならば、英国がEUから一旦は離脱するとEUの規定に従う必要がなくなり、英国が独自の判断で動くようになる。その一方で、スペインはEUに加盟している限りEUの加盟国としての枠内で動かざるを得ないという事情があるからだ。  このような事情があって、スペインは英国が一旦EUから離脱したあとはジブラルタルに関係した案件ではスペインは英国との二国間での交渉ができるということをEUが認めることを要求し、それが飲めない場合は反対する意思を表明していたのである。
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ジブラルタルの立場とスペインの「事情」
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