遺伝子組み換え食品を「食べたくない」と考えている人が多いのはなぜなのか?

組み換え大豆を食べた母親から生まれたラットの新生児、半数が死亡

エルマコヴァ博士

エルマコヴァ博士(2006年の来日時)

 2005年に「遺伝子組換え大豆がラットの子どもの出生率と死亡率に与える影響」について研究を行ったロシア科学アカデミーのイリーナ・エルマコヴァ博士も、同様の指摘をしている。  実験の結果、遺伝子組み換え大豆を添加した飼料を食べた母親から生まれた、ラットの子どもの半数は死亡。その3分の1は、非組み換え大豆を食べていた子どもと比べて20グラム以上小さかった。
エルマコヴァ ラット

遺伝子組み換え大豆を食べさせたラットは、普通の大豆を食べさせたラットよりも20g体重が少なかった

 エルマコヴァ博士はその原因を、「パーティクルガン法(挿入遺伝子をショットガンのように撃ち込む)」や「アグロバクテリウム法(遺伝子を改変された病原体を細胞に感染させる方法)」などの遺伝子組み換え技術が不完全なために、遺伝子を挿入された細胞に何らかの影響を与えた可能性を否定できないと指摘する。

組み換えトウモロコシ、除草剤どちらもラットにがんが発生

GMセラリーニ写真

組み換えトウモロコシや除草剤を与えたラットには、大きながんが発生した(セラリーニ教授の論文が掲載された科学雑誌「Food and Chemical Toxicology」より)

 フランス・カーン大学のG・E・セラリーニ教授の研究チームが、ラットに遺伝子組み換えトウモロコシ(除草剤耐性)を長期間与える実験を行ったところ、「5~7割が早死、5~8割に大きながんができた」と報告した。  セラリーニ教授は遺伝子組み換えトウモロコシとともに除草剤(主成分グリホサート)の影響についても調査したが、遺伝子組み換えトウモロコシ、除草剤のいずれの場合もがんが発生したという。  組み換えトウモロコシ、除草剤のいずれの場合も11%という低濃度でもガンが発症しているという実験結果から、さまざまな食品から微量ずつ組み換え食品を摂取している日本人の場合、低濃度・長期間暴露の影響を心配する必要があると思われる。

遺伝子組み換え技術に警鐘を鳴らす論文は抹殺される!?

 プシュタイ博士、エルマコヴァ博士の実験は、遺伝子組み換え作物がラットやマウスの成長や発達、免疫系などに影響を及ぼしているとして、人への健康影響に警鐘を鳴らしたものだ。しかし、プシュタイ博士は研究所を追われ、エルマコヴァ博士は追加の実験をするための遺伝子組み換え大豆が入手できなかった。  セラリーニ教授は実験結果が掲載された科学雑誌から論文が取り下げられ、これに反発した科学者たちが同科学雑誌をボイコットする事態となった。遺伝子組み換え技術に異を唱える科学者が追われたり否定されたりするのは初めてのことではない。  しかし、本来ならばこうした論文を抹殺するのではなく、論文上で意見を戦わせ、組み換え作物の安全性を立証することこそ消費者の不安を払拭することになるはずだ。  日本の遺伝子組み換え反対運動が「消費者の知る権利」「選択する権利」のための表示を求めてきたのに対し、米国の子どもをもつ母親たちは遺伝子組み換え問題を健康の問題ととらえ、運動を広げてきた。  子育て中の母親たちは、米国の子どもの健康状態が、「6人に1人が学習障害」「9人に1人がぜん息」「10人に1人がADHD」「12人に1人がアレルギー」……という驚くべき現状に愕然とする。「子どもたちの体がおかしい!」と感じた母親たちが原因を探っていく中でたどり着いたのは「食べ物が子どもの命を脅かしているのではないか?」という結論だ。
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遺伝子組み換え作物・農薬を使用した作物を排除したら子どもの症状が回復
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