兜町関係者は熱視線! 不安材料も解消できる余地あり
日産株の推移
もちろん不安材料もある。日経CNBC解説者の岡村友哉氏が話す。
「これまでゴーン氏は日産と親会社ルノー、’16年に傘下に収めた三菱自動車の3社のアライアンス効果が’17年度で57億ユーロ(約7300億円)にのぼったと強調してきました。そのアライアンス効果が維持できるのか?という不安材料が一点。2つ目は減配の可能性。日産は’99年にルノーと資本提携して43.4%の株を握られて以降、配当金で還元してきましたが、’17年3月期でルノーが出資した8000億円を配当で“完済”しています。これ以上、高配当を維持する理由がないのです。3つ目は機関投資家の売り圧力。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は環境・社会・企業統治の3つの要素に優れた経営を行っている企業に投資する“ESG投資”を主導していますが、今回の騒動は企業統治の面でマイナスポイント。ESG関連の指数構成銘柄から日産が外されて、売られやすくなる」
高額役員報酬はカット 不平等アライアンスは見直し?
ただし、いずれの不安材料も解消できる余地はありそう。東京商工リサーチ情報部長の友田信男氏が話す。
「アライアンス効果はプラスの材料ばかりではありません。インドで日産マーチを売り出そうと現地に工場を造ったのに、業績不振のルノーの雇用対策として’16年からマーチの生産はフランスの工場に委託されてしまいました。’12年にはロシアの自動車メーカー・アフトワズをルノー・日産で約600億円出して買収しましたが、なぜか日産の出資額が400億円弱と多かった。同じ年には日産とルノーで1000億円を投じてモロッコに新工場を建設しましたが、この工場で生産されているのはルノーの車体ばかり。ルノーだけが得するアライアンス効果が目立つ」
仮に関係が見直されれば、むしろ日産のプラスとなる可能性もあるというのだ。減配は避けられなさそうだが、「ゴーン氏が19年間トップに君臨し、今年まで独立社外取締役を置いていなかったため、ESG関連指数における日産株の組み入れ比率は小さく、売り圧力は限定的」(証券関係者)という。
「今年前半にルノーの大株主であるフランス政府がルノーと日産の合併を進めようとしているという情報が流れたように、最大の注目点は両社の関係性。親(ルノー)よりも子(日産)のほうが利益も販売台数の時価総額も上という歪な親子関係が改善されるようなら買い材料。現状維持でも高配当が継続する可能性が高まるため下値不安は小さい」(同)
当面は下げたら買いの投資スタンスが最適解……かもしれない。