アベノミクスのメッキがはがれ、“アベノリスク”が浮上する――政治経済学者・植草一秀氏
2014.12.30
10月31日の“黒田バズーカ―2”の号砲をきっかけに、国民の年金を運用する世界最大の機関投資家・GPIFのみならず、衆院選までもが“官制相場”の燃料となり、円安・株高を演出。2014年を振り返ると、アベノミクス第二幕がド派手に炸裂した1年だった。果たしてこの国の経済は、どこに向かっているのか。新聞・テレビの情報から読み解くことは困難を極める。そこで政治経済学者・植草一秀氏に2015年の日本経済はどう動くのか。その趨勢を大胆予測してもらった!
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
【植草一秀氏】
政治経済学者。スリーネーションズリサーチ(株)代表取締役。近著に『日本の奈落-年率マイナス17%GDP成長率衝撃の真実-』
<日経平均↓円の価値↑>
日経平均は1万8500円の高値をつけた後、1万4000円に下落。為替は127円の高値をつけた後、100円まで円高になると予測する
7年ぶりのドル円相場と日経平均株価が市場を賑わしたが、総選挙で好材料は出尽くした感が強い。
日本の株式市場は10月前半に変調の兆しを示したが「官製相場」によって状況が一変した。10月末に日銀が追加金融緩和を実施、11月中旬に安倍政権が消費税再増税の延期を打ち出した。
NY株価が復調したことも重なり、アベノミクスの好印象が人為的に植え付けられた。総選挙に向けて、日銀資金が迂回ルートをたどってドルを押し上げ、GPIFの資金が日本株価を買い支えた。
真実を知らされない国民は、アベノミクスで日本経済が浮上すると錯覚して安倍政権を総選挙で勝利させたが、「釣った魚に餌はやらない」政策が実行されるだろう。
労働者の実質所得は大幅減少が続いており、ここに、’17年4月の消費税率10%確定の法改定がのしかかって、個人消費の低迷、停滞が持続することになるだろう。
米国長期金利上昇に裏打ちされないドル高は推進力を失う。ドルに投資した金融機関はドル高のピークアウトを察知すれば、一斉にドル売りに転じる。「日本円の巻き戻し」で円高・ドル安トレンドが再現される。
すると株価は円高傾向に連動して反落してしまうリスクが高まる。
投資戦略としては、日本円反発の可能性がひとつの着目点。ドルで資金を調達して日本円に投資する手法活用が検討される。
日本株価が下落するときの有効な投資戦術は、日経平均先物の「売り」である。投資の収益機会は「買い」にだけではなく、「売り」にも存在することを忘れてはならない。
円安は輸出製造業の利益拡大と株価上昇をもたらすが、円高になると輸入比率の高いセクターがメリットを受ける。これも狙い目。
日本経済にとって好ましいシナリオではないが、総選挙後の円高・株安ストーリーを念頭に入れておく必要があるだろう。
安倍政権が事態暗転を回避しようとするなら、’17年4月消費税再増税を無期限延期するべきだ。安倍政権が柔軟な対応を示すことができるなら、日本経済は再浮上する。活路は閉ざされていない。安倍政権の「変節」が必要だ。
『日本の奈落-年率マイナス17%GDP成長率衝撃の真実-』 消費税10%激烈台風の上陸! GDP成長率年率マイナス17%の衝撃の真実! |
ハッシュタグ