ペンス副大統領との会談の翌日、安倍首相はプーチン大統領とシンガポールで会談している。
話し合われたのは、平和条約についてだという。9月にウラジオストクで開催された「東方経済フォーラム」の壇上でプーチン大統領が「年末までに前提条件なしで平和条約を結ぼう」と突如発言したことは記憶に新しい。安倍首相はこれに応じる形で、今回、「平和条約締結後に歯舞、色丹を引き渡す」とした1956年の日ソ共同宣言をベースに交渉を再開するよう提案したわけだ。
いうまでもなくこの提案は、これまで本朝が貫いてきた
「4島返還論」の放棄でしかない。なるほど「2島+αが現実論」、「日ソ平和条約に明記されているのは歯舞と色丹だけ」との理屈は成立するだろう。
しかし、これまで本朝が一貫して主張してきたのは四島返還論であり、この路線を維持せんがため、佐藤優氏の外務省からのパージなど、時には2島先行返還論者を売国奴扱いしてまで、死に物狂いの努力を重ねてきたはずである。だが、今回の交渉でこれまで本朝が堅持してきた路線はあっさりと放棄された。しかも翌日のプーチン大統領会見では「
あくまで主権はロシア側」に残置されるというのである。これでは2島返還さえおぼつかない。
なんのことはない。この一週間外交で安倍首相は日本を叩き売ったのである。「外交の安倍」の実態とは、貿易交渉でアメリカに頭をたれ、ロシアに領土を売り渡すことでしかない。金を流出させ領土を喪失させるのだから、これほどわかりやすい「売国奴」もまたといまい。
カルロス・ゴーン氏は確かに、日産の社員や株主を裏切ったのだろう。日産の関係者からすれば、50億もの虚偽申告が事実なのであれば、到底許しがたいものに違いない。そう考えてみれば、ゴーン氏に関して朝野の関心が集まるのも無理はなかろう。
だが、稀代の売国奴・安倍晋三が、たった一週間で日本を売り払ってきたばかりである。収入を誤魔化す金持ちと、国を売り渡す為政者と、どちらが社会にとって害悪か、考えるまでもなかろう。
<取材・文/菅野完>
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