玉城デニー沖縄県知事訪米。日米両政府に対して「対話」を呼びかける

沖縄は、激しい反発をする“パンドラの箱の鍵”になってしまうかもしれない

島袋まりあ

ニューヨーク大学での講演は、玉城知事の隣で司会進行役を務めた島袋まりあ准教授(左端)が尽力して実現。島袋准教授も父がアメリカ人で母が沖縄人。「玉城知事と連絡を取り合っているうちに考えが一致して、ニューヨークでの講演が具体化した」と話す

 沖縄の民意が日米両国に届かない現実を紹介したうえで、玉城知事は次のような警告も発した。 「第二次大戦後、アメリカは沖縄を太平洋の要石、“キーストーン”と呼びました。米軍の軍事戦略において、沖縄は『太平洋から東アジアへの鍵である』という意味です。しかし、沖縄を民主主義からも法律からも例外的な存在を続けていくならば、その“鍵の石”である沖縄から、激しい反発をする“パンドラの箱の鍵”に変わってしまうかもしれません。そうなれば、日米両国と沖縄県民の間には、修復不可能な亀裂が生じてしまうでしょう」  そして玉城知事は、こうした事態を避けるために「対話」を呼びかけた。 「『アメリカと日本と沖縄の三つを、どれ一つ欠かすことなく、話し合いを持つようにしてほしい』と強く訴えてください。保存されるべき豊かな自然環境と互いの友情を、将来の子供たちにつなげるために『正しい』と心から信じる声と行動が必要です。  お互いの沖縄のために、皆さん、立ち上がってぜひ行動してください。あなたの国の政府に、アメリカの民主主義の誇りを沖縄にも届けるようにどうぞ要求してください。沖縄県民に残された時間はあまりありません。  しかし、みんなが立ち上がれば変化が起こります。変化が早く大きく起きるほど、状況は大きく早く変わります。日米両政府が辺野古の新基地建設を断念するまで、みんなでぜひ動いていこうではありませんか」  こう訴えて講演を終えると、会場の教室を埋め尽くした参加者からは大きな拍手が沸き起こった。  今回の講演の段取りをしたのは、玉城知事の隣で司会進行役を務めたニューヨーク大学の島袋まりあ准教授だ。彼女は父がアメリカ人で母が沖縄人。玉城知事とは10年以上前からのつき合いだという。 「連絡を取り合っているうちにお互いの考えが一致し、『多様性に溢れるニューヨークで講演をしましょう』という話が具体化していきました」(島袋氏) 「人種のるつぼ」とも評されるアメリカ最大の都市ニューヨークで、玉城知事は「多様性」をキーワードにしてアメリカ世論に訴えることからまず始めている。 <玉城知事との面談直後、報道関係者に発せられた米国務省の声明(11月14日)> You may attribute the following to a Department of State Spokesperson: State Department Acting Deputy Assistant Secretary of State for Japan and Korea Affairs Marc Knapper and Acting Director for Japan in the Office of the Under Secretary of Defense for Policy Paul Vosti met Okinawa Governor Tamaki at the State Department on November 14. In the meeting, Acting Deputy Assistant Secretary Knapper and Acting Director Vosti conveyed the sincere appreciation of the United States to Okinawa for hosting U.S. military personnel and for playing a central role in the U.S.-Japan Alliance, which continues to be the cornerstone of peace, prosperity and freedom in the Asia Pacific. They also reiterated the unwavering commitment of the United States to the construction of the Futenma Replacement Facility at Camp Schwab. <取材・文・撮影/横田一> ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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