ただ、自治体側が100%被害者というわけでもない。別の自治体関係者は「自治体側がJRに反発するのは、つまるところ選挙対策。首長たちにすれば廃止受け入れや財政援助などの負の決定は選挙にマイナスですからね。それに今まで鉄道や駅を中心としたまちづくりをしてこなかったツケでもある」と話す。現実的に協議のテーブルにつけばJR側に押し切られてしまう不安や、財政援助をしたくてもそれだけの余裕がないという事情もあるだろう。境氏は言う。
「この段階に来てからでは信頼関係の醸成は難しいでしょう。だからこそイニシアチブを取るべき北海道も積極的に関わろうとはしません。おそらく財政支援を求められるのを恐れているのでしょう。今夏、国交省がJR北海道に2年400億円の財政支援をする方針が発表されました。ただその際もJR側は北海道新幹線札幌延伸までの支援を求めており、2年という短いスパンでの支援に不満気でした。結局のところ、JRも沿線自治体も北海道も、最終的には“国がなんとかしてくれる”というスタンスなのではないかと思われても仕方ないですよね」
そんななか、JR北海道の相次ぐ不祥事と経営難を受けて発足した第三者委員会「JR北海道再生推進会議」が11月13日に13回目の会合を終えて「一定の役割を果たした」として解散することが明らかになった。この第三者委員会では、JRの消極的な取り組みに厳しい声が毎回のように挙がってきたが、どうやら“再生”への明確な見通しを示すまでには至らなかったようだ。
最後の会合の直前、9日には千歳線の信号機が倒れるという重大インシデントも発生した。肝心要の安全も脅かされ、経営面でも沿線との協議には決着のめどもたたない。はたして、北の大地の鉄路はどうなってしまうのか? 残された時間は、決して多くはないはずだ。
<取材・文/HBO編集部>