安田純平氏
共同通信は11月17日、シリアで拘束され解放・帰国したフリージャーナリストの安田純平氏に対し、「警視庁公安部が聴取を要請した」との記事を配信した。
記事によると「時期は未定」とのことで、「体調が戻ったら話を聞かせてほしい」と捜査関係者は安田氏に伝えたという。
そして、記事はその後こう続いている。
「安田さんは共同通信のインタビューに『体力が落ち、回復している感じではない』と話し、ぜんそくの症状や腰のヘルニアなど健康への懸念を口にしていた」
この記事を見て、Twitterなどを中心にネット上では「会見したりマスコミ取材を受けたりしているのに、公安の聴取は受けないのか」「体調を理由に公安から逃げている」などといった安田氏に対する批判や、「公安の聴取だけを拒否するというのは、聞かれたらまずいことがあるのでは」との憶測までが広がっている。
そこで、安田氏本人を直撃、ことの真相を聞いてみた。
――警視庁公安部から聴取の要請があったそうですね。
安田:外事三課から「話を聞きたい」と。妻の携帯の留守電に入っていました。私は携帯電話を拘束者に奪われて、連絡手段がないんです。自宅にも帰っていませんでしたし、身分証明書になるものを紛失してしまっていて、携帯電話の復旧ができていません。電話で連絡がくる場合は妻が受けていたのですが、彼女自身も仕事関係の電話が日々大量にかかってくることもあって、外事三課からの不在着信に気づかなかったのです。共同通信の記事配信があってから着信履歴などを調べて、初めて知りました。
――共同通信の記事を見て、要請があることを知ったと。
安田:はい。あの記事が配信された時点では私も妻も、警視庁とは一切何も話していません。こちらが留守電を聞いたかどうかもわからないのに、留守電に入れただけで「要請した」「伝えた」とは、警視庁自身も思っていなかったのではないでしょうか。
――留守電には何と入っていたのですか?
安田:「体調はいかがでしょうか。体調が良くなりしだい、ご主人からお話を伺いたいと思っていますので、その旨お伝えください」という内容です。警視庁からの聴取の意向が私自身に伝わったのはこれが初めてです。このとき妻が東京を離れていましたので、翌朝、妻が着信のあった外事三課の番号に電話をかけました。
――そこで日程は決まらなかったのですか?
安田:妻は「いつでもいいです」と伝えたのですが、先方は「いやー、本当に体調が戻ってからでいいですから」と言っていたとのことです。「こちらも予定があるので早く決めてほしい」とお願いすると、「上司に聞いてから……」と言うので、「急ぎではないのですか。では連絡を待っていればいいですか」と確認しました。すると「急ぎではないです。連絡をお待ちください」とのことで、そのときには決まりませんでした。