中米諸国で加速する中国の札束外交。ビジョンなき政治は中国の支配を強めるだけと識者

中米諸国に必要なのは自身の「ビジョン」

 パナマ大学経済学部のロランド・ゴルドン学部長は「中国は何を望んでいるか自ら熟知している。問題は、我々中米諸国は自分自身が何を望んでいるのか分かっていないことである」と述べている。(参照:「El Diario de Hoy」)  エル・サルバドル経済社会開発基金(Fusades)のホセ・アンヘル・キロスは「2030年には世界の商取引のトップは中国になるというのは誰も止めることはできない。それを前に、我々が気になるのは、我が国がやっていることは逆で、やるべき明確なプランをもっていないということ。どの方向に進むべきか分からない時はどのようなプランでも良いように思える」と述べている。  彼はまた、同基金のセミナーにおいて、明確なプランのなかったスリランカの例を挙げて、必要でなかった港の建設に中国が資金を供与して建設されたが、スリランカはその負債が重荷となって結局99年間、港を譲渡するということになってしまったという事例を紹介している。(参照:「El Tienpo Latino」)  中国による札束外交は、確かに国の発展に役立つ面もあろう。しかし、国が明確な目的やビジョンを持っていないまま、中国の資金を甘んじて受け入れることは、中国による支配を進めることに他ならないのだ。 <文/白石和幸> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会