トラック運転手がハンドルに足を上げて休むのには、やむにやまれぬ事情があった

橋本愛喜

ハンドルに足を上げて休むトラックドライバーたちの姿は、決して行儀の良いものではない。しかし、それには深い事情があった⁉️

 「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてもらいたい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。今回は、前回の「トラックが路上に駐停車して休憩する理由」に引き続き、「ドライバーがハンドルに足を上げて休憩する理由」について説明していきたい。

 前回述べた通り、トラックには、路上に駐停車して待機せざるを得ない事情がある(まずはそちらを読んでいただくことをお勧めする)。

 一方、他の一般ドライバーにとっては、こうした「路駐停のトラック」はただの邪魔でしかなく、その存在だけでも大きなストレスになるところ、その車内のドライバーがハンドルに足を上げてふてぶてしく休んでいる姿まで目に入ってくれば、イライラはさらに募ることだろう。

 実は、長距離を走るほとんどの大型トラックの座席後部には、大人1人分の「ベッドスペース」がある。決して広いとは言えないが、大柄な男性でも、横になって睡眠を取るには十分な空間だ。が、それでも彼らは、敢えてあのような足を上げた体勢で休憩を取ることがあるのだ。

 その理由は、「不規則な休憩時間」にある。

 彼らが取れる休憩時間のタイミングや長さは、とにかく悪く、そして短い。

 荷主の元で数時間かけて荷積みをし、搬入先に向けて真夜中の暗闇をひた走る。ようやく気分が乗ってきたころに、トラック業界の労働基準法「改善基準」で義務付けられている「4時間連続走行で30分の休憩」を取るタイミングとなり、先を急ぎたい気持ちを抑えてクルマを停める。

 途中、事故渋滞や交通規制に巻き込まれれば、タイトな時間との戦いに気を揉み、搬入先付近に到着する頃には、睡魔も疲労も限界。が、それらを解消できるほどの休憩時間を取れないまま、搬入先での荷降ろしの時間がやってくるのだ。

 そんな状況の中、わずかな時間の「仮眠」のために、後ろにあるベッドへ体を埋めるとどうなるかは、トラックドライバーでなくても想像に難くないだろう。「寝過ごす」のだ。つまり、疲れ切ったその体には、ベッドはあまりにも快適すぎるのである。

 こうして、休憩時間が短い場合、多くのドライバーが運転席で仮眠を取ることを選択するのだが、その狭く不安定な座席で、最も楽にいられるのが、例の「ハンドルに足を上げた体勢」なのだ。通称、「足上げ」。束の間、アクセルやクラッチから解放された足を、心臓よりも高い位置に置くことで、長時間の着席状態で生じた「浮腫み」を和らげる。

 が、そんな体勢が「快適」であるわけがない。数十分もすれば襲ってくる足のしびれや腰の痛みが、彼らの「目覚まし代わり」になるのだ。

 筆者もトラックを運転していた当時、足の浮腫みには大変悩まされていた。走り始めたらストレッチどころか、立ち上がることすらできなくなるため、手で押して確認するふくらはぎの「パンパン度」は、毎度デスクワーク時以上にひどかった。

 トラックに乗り始めてしばらく経ったある日のこと、あるサービスエリアで毎度仲良くしてくれていたドライバーのおっちゃんたちに「足が浮腫む」とこぼしたところ、「こうすれば幾分楽になるぞ」と、わざわざ実演交えて教えてくれたのが、この「足上げ」だった。女性である手前、彼らのように高々と上げることは憚られたが、両足をハンドルと窓の間に入れ込むだけでも、その違和感は大分和らいだ。

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ハンドル足上げは、エコノミークラス症候群を防ぐためにも有効

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