140年前に消滅した「県」が復活!? マイナー県の復活劇、その理由とは

あまりに「地味」! 現実世界の「度会県」はいずこへ?

 さて、ここまで「度会県」の復活による「地域づくり」に対する取り組みについて述べてきた。  一方で、現実世界の「度会県」の目立った面影は、現在の近鉄宇治山田駅前にある「度会府庁跡」(のちの度会県庁)の看板くらいに留まっている。
近鉄宇治山田駅

伊勢神宮への玄関口である近鉄宇治山田駅。かつての度会県庁はこの附近にあった

 取材に応じた三重県地域連携部南部地域活性化局の担当者によると、今のところ「度会県の取り組みでは現実社会にある関連資産の活用までは想定していない」といい、現実世界の三重県南部に「うどん県」や「おんせん県」のように「ようこそ度会県」のような看板を作る予定はないという。また「度会県復活」に呼応するかたちで、民間レベルで「度会県」をアピールするというような目立った動きもまだ起きていない。  地域活性化のため「140年前に消滅した県を復活」というユニークな手法を採った今回の取り組み。しかし「度会県」の名前で興味を持つのは地理ファン・歴史ファンくらいなもので、「度会県」自体の知名度の低さをカバーするには至っていない。これでは、地域にそれほど興味がない人にとっては「何かと地味な三重県南部」が「とてもマイナーな度会県」を復活させただけの話に留まってしまうのではないだろうか。
うどん県さぬきうどん駅

高松駅に掲げられた「うどん県さぬきうどん駅」の駅名票。度会県ではこうした取り組みは「今のところ計画されていない」という

 まだまだ「度会県復活」の取り組みは始まったばかりだ。三重県民でさえも知らない人が少なくない「度会県」が「うどん県」のように市民権を得て、いずれは「三重県南部活性化の起爆剤」となる日が来るのか――単なる県の一部局の取り組みに留まらず、三重県の、そして「度会県民」からの「更なる一手」が生まれるかが注目される。  多くの観光客が行き交う近鉄宇治山田駅前にありながら、今は観光客が見向きもしない「度会府庁跡」の看板が、近い将来「一大観光地」となる日が来る……のかも知れない。  度会県の県民登録は実際にそこに住んでいない人であっても可能だ。あなたもこれを機に度会県公式サイトへとアクセスして「度会県民」になってみてはどうだろうか。
「度会府庁跡」

「度会府庁跡」(のちの度会県庁)を示す看板。

<取材・文/淡川雄太 若杉優貴 撮影/愛須圭一郎(都市商業研究所)> 都市商業研究所 若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken
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