商業打ち上げは、純粋にビジネスという観点から重要であると同時に、日本が自律した宇宙への輸送手段、すなわち国産ロケットを確保し続けるためにも必要である。
国産ロケットを維持し続けるためには、官需打ち上げに加え、商業打ち上げによって、打ち上げ回数を増やすことが重要となる。打ち上げ回数が増えれば増えるほど、規模の経済によって機体のコストや打ち上げにかかるコストの削減が図れ、維持しやすくなる。その結果、官需衛星の安定的な打ち上げや、その打ち上げの効率の向上、さらに商業打ち上げの受注機会のさらなる拡大も図れる。
長らく商業打ち上げの受注が難しかったH-IIAだが、高いオンタイム打ち上げ率という独自の強みを武器に、徐々に受注件数が増えてきた。さらに開発中の次世代ロケット「H3」では、コストがH-IIAより半減する見通しで、価格面での競争力の強化も期待できる。
これまで築き上げてきた実績、そして強みを継承しつつ、H3の開発と運用を成功させることができるかどうかに、日本の宇宙輸送の未来がかかっている。
開発中のH3ロケットの想像図 (C) JAXA
<取材・文/鳥嶋真也>
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。著書に『
イーロン・マスク』(共著、洋泉社)など。
Webサイト:
http://kosmograd.info/
Twitter: @Kosmograd_Info(
https://twitter.com/Kosmograd_Info)
【参考】
・JAXA | H-IIAロケット40号機による温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2)及び観測衛星「ハリーファサット(KhalifaSat)」の打上げ結果について(
http://www.jaxa.jp/press/2018/10/20181029_h2af40_j.html)
・UAEドバイ政府宇宙機関MBRSCの観測衛星KhalifaSatを軌道投入 H-IIAロケット40号機の打上げ成功|三菱重工(
https://www.mhi.com/jp/news/story/1810295974.html)
・About KhalifaSat | Most Technologically Advanced Satellite(
http://www.khalifasat-thejourney.com/en/about-earth-satellite/)
・ドバイEIASTから衛星打上げ輸送サービスを受注|三菱重工(
https://www.mhi.com/jp/news/story/1503095625.html)
・UAEドバイのMBRSC から火星探査機打上げ輸送サービスを受注|三菱重工(
https://www.mhi.com/jp/news/story/1603225739.html)