トラックがやけに車間を詰めてくるのは理由があった。元トラック運転手が解説

トラックがやけに車間を詰めてくるように感じるのは明確な理由があった

 「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。  前回は、「一般車の割り込みでトラックが晒される危険」について説明したが、今回からは、トラックが「マナー違反だ」と言われる行為について、その理由や事情を数回に分けて説明していきたい。  トラックドライバーの実態について言及すると、毎度聞こえてくるのが「彼らはマナーが悪い」という一般ドライバーらからの声だ。  確かに、マナーの悪い悪質なトラックドライバーも多く存在する。同業同士で腹を立て合うことも日々あるし、かくいう筆者も、今までに何度彼らに吠えたか知れない。  が、こうした悪質な運転をするドライバーのほとんどは、「トラックドライバーだから悪質な運転をする」という訳ではない。トラックを降り、乗用車に乗り換えた仕事終わりの帰り道でも、彼らは大概行儀の悪い走り方をするものだ。  一方、こうした悪質なドライバーのケースとは別に、トラックの世界には、ドライバーが無意識に起こしてしまうマナー違反や、マナー違反だと知っていてもどうすることもできない日本社会全体の構図が存在するのも、また事実である。  中でも、特に彼らが指摘されるマナー違反が、「車間の狭さ」だ。  前々回の「トラックがノロノロ運転をする理由」でも述べたように、一般道を走行している時や渋滞中は、車間を大きく空けて走っているトラックだが、一転、信号待ちなどで完全停止している時には、車間を極端に詰め、一般ドライバーを無意識のうちに怖がらせてしまうことがある。  こうした現象を起こす原因になるのが、トラックにある2つの特性、「車高の高さ」と「キャブオーバー型の車体」である。  乗用車の場合、アイポイント(ドライバーの目の高さ位置)はミニバンでも地上から約1.3~1.4m。それに対し、車高の高い大型トラックの場合は、軽く2mを超える。  さらに、現代、日本を走るほぼ全てのトラックは、見ての通りボンネットがない「キャブオーバー型」というタイプのもので、運転席の前に視界を遮る車体パーツがない。  ちなみに、アメリカの広大な大地を走る長距離トラックは、ボンネットが付いている、その名も「ボンネット型」なるタイプが主流なのだが、国土も道幅も狭い日本を走るには、できるだけ車体は短い方がよく、空気抵抗を深く気にするほど「超長距離」を走る訳でもないため、キャブオーバー型が最適なのだ。
NY市内を走るボンネット型のトラック(昨年冬撮影)

アメリカではメジャーなボンネット型のトラック

 これら2つの要素を兼ね備えている日本のトラックは、乗用車に比べて視界が大変広く、前の乗用車を「見下ろす」格好になる。すると、ボンネットが付いている車高の低い乗用車からよりも、前のクルマと自分のクルマの間に見える「地面の面積」も広くなり、「十分な車間を取っている」という錯覚を起こすのだ。
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一方、一般車ドライバーにも目の錯覚はある
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