増える悪徳[免税転売]。消費税増税は犯罪組織を利する可能性も

純金アクセサリーをバンコクで換金!?

 一方、免税転売に利用されるのは高級時計だけではないようだ。昨年、香港など消費税のかからない国で金地金を購入し、日本に密輸して売却し8%の消費税分を得るというスキームが裏社会で流行した。現在、当局による対策強化で穴が塞がれつつあるなか、逆のパターンが流行しているという。 「金地金は消費税免税の対象外だけど、アクセサリーなどの純金製品なら免税になる。そこでまず、外国人旅行者に質流れの純金製品を、重さ当たりの金相場とほぼ等価で売るリサイクル店などで免税購入させる。それをバンコクの金市場に持ち込んで売却する。タイは純金の形態にかかわらず、重さで買い取り価格が決まり、さらに7%の消費税が得られる」(M氏)  ちなみに100万円相当以上の純金製品持ち出しには申告が必要だが、「日本の税関もノーマーク」(同)だと言う。さらに取材を進めると、もっと大胆不敵な犯罪が行われていると証言する人物もいた。貴金属店の元従業員・T氏は言う。 「実はこのスキームは、免税店としての許可があれば、旅行者の名義も商品も必要ない。架空の外国人が、何か高級品を免税購入したことにしてしまえばいい。入国スタンプのあるパスポートを偽造し、そのコピーと免税物品購入記録票を税務署に提出し、商品の仕入れ時の消費税を虚偽申告すれば、還付されるんです」  同様のスキームはすでに事件化している。東京国税局は7月、腕時計を外国人に免税手続きをして販売したように装い、不正に消費税約1億円の還付を受けようとしたとして、都内の時計店を消費税法違反容疑で告発しているのだ。  観光立国推進のための免税制度がこのように悪用されていることに関し、国税庁の見解はどうか。 「現状で(紹介したような)転売を取り締まる法律はない。ただし、出国時にランダムチェックを行っており、一定の実績は上がっています」(消費税室)  来年10月の消費増税で税率は10%になる。免税転売グループは一般庶民と逆にこれを「大歓迎」しているに違いない。 取材・文・撮影/奥窪優木 図版/佐藤遥子 ― 独占スクープ 悪徳[免税転売]の闇 ―
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