ブラジルで極右大統領が誕生。周辺諸国の首脳陣やメディアはどう見ているのか?

「世界一貧しい大統領」は「国民は選択を誤った」と発言

 ブラジル国民がボルソナロを大統領に選んだ一方で、各国の反応はさまざまだ。 「世界一貧しい大統領」として今もなお人気が高い、ウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領はボルソナロの勝利に次のように語っている。 「残念ながら、国民は間違った」、「アドルフォ・ヒットラーもドイツ政権に就いたが、国民の票がそこに導いたのだ」、「人生は改善にも改悪にも変えることができる。人間は何度も過ちを犯すのだ」、「人間の記憶は浅い。変えようとして、改悪を選んでしまうという危険がある。それがブラジルが抱えている問題なのだ」。(参照:「El Periodico」)  周辺諸国の右派系の大統領は、概ね祝福の言葉をツイートしている。  アルゼンチンのマウリシオ・マクリ、チリのセバスチアン・ピニェラ、コロンビアのイバン・ドゥケ、メキシコのエンリケ・ペーニャ・ニエト、ペルーのマルティン・ビスカッラ、グアテマラのジミー・モラレス、パラグアイのマリオ・アブド・ベニテス、エクアドルのルイス・モレノ、コスタリカのカルロス・アルバラドそして米国ドナルド・トランプらである。

ブラジルと関係の深いアルゼンチンは……

 ブラジルにとって最大の貿易相手国はアルゼンチン。ブラジルがくしゃみをすればアルゼンチンは風邪をひくと言われている関係にある両国である。ボルソナロがアルゼンチンに如何に強い関心を示しているかということに、彼は選挙戦中に既にマクリ大統領と電話会談しているということである。  アルゼンチンにとってもブラジルの次期大統領の政治姿勢が自国の経済に重要な影響を及ぼすことを熟知しているマクリ大統領も、ブラジルの次期大統領候補から電話会談をしたということをメディアにも公表している。 『El Clarin』(10月28日付)でトヨタにも触れており、トヨタがブラジルが安定政治に1月から復帰することに祝辞を送っている。候補者が選挙戦中に発言している内容と実際に政権に就いてからは違いがあるというのを承知した上で、ブラジルの自動車市場が10%から13%伸展すると見越しており、年間に270万台のブラジル市場での販売を見込んでいると同紙は報じている。  その一方で、アルゼンチンはブラジルがメルコスル(南部共同市場)への関心を今後も持ち続けて行くかということを懸念している。メルコスルはアルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイが加盟している共同市場で、ブラジルがこの市場から仮に抜けることになると、メルコスルの存在意義がなくなる。ベネズエラも加盟していたが、現在の同国の政治情勢が要因で一時的に離脱させられている。  マクリ大統領はボルソナロとの電話会談で「(ブラジルが)メルコスルから離脱するようなことは出来ない」と伝えられたと述べていることも同紙は言及している。  ボルソナロが政治面でどのような人物であるかということについては、アルゼンチン各紙はまちまちの推察をしている。 『ambito』(10月29日付)はロシアのボリス・エリツィンに似た政治家ではないかと推察している。エリツィンは自由市場経済のプログラムもロシアに持ち込み、それまでの統制価格から自由化に踏み切り、金利も自由化し、透明性に欠ける部分はあったが国営企業の民営化を計ったとし、ボルソナロも国営企業の民営化も重要な経済政策のひとつとなるだろうとしている。 『LA NACIÓN』(10月28日付)はボルソナロについて、トランプ、プーチン、エルドアン、ドゥテルテ、オルバン、サルビニといった名前と並列する存在として言及している。その上で、彼らのラテンアメリカにおける代理をボルソナロは務めるかのようであるが、その見分けは難しいと指摘している。 『PERFIL』(10月29日)は、アルゼンチンのメネム元大統領が行ったように大規模にブラジルの市場を開放するのではないかと予測している。メネムも軍事政権から民主化になって服役中の多くの軍人に恩赦を与え、彼の政策遂行に軍部からも支援を得ていた。ボルソナロの政治に軍人を尊重しようとする姿勢に類似していると指摘したのだ。  また、同紙はイスラエル紙「Haaretz」が、福音派の支援でブラジルに新しいヒットラーが再来したのではないかと尋ねていることも報じている。
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チリ・コロンビアは概ね歓迎
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