その理由は明白だ。米国がインドに制裁を科せば、インドはこれから益々ロシアとの関係強化に動き、またBRICSそして上海協力機構(OCS)のメンバーでもあることからインドがロシアそして中国のブロックにより接近する可能性があるからである。そうなれば米国はアジアにおける中国と対峙できる国を味方につけることができなくなる。
モディ首相は米国のこの立場を良く把握しているようだ。
米国は、イランからの原油の輸入を止めるように同盟国に要請しているが、インドはイランからの原油の輸入も継続する意思を表明している。尚、日本は米国の指示通りに従っている。しかも、インドからの決済は相手が制裁下のイランということでインド通貨ルピアを使用する意向だ。
インドが輸入する原油の44%はイランからの輸入である。しかも、インドはイランのチャバハル港の開発に<5億ドル(550億円)>をこれまで投資している。(参照:「
Pars Today」、「
HispanTV」)
その狙いはライバルのパキスタンの領土内を経由せずにイランからの原油の輸入をチャバハル港から行い、そこから資源が豊富なアフガニスタンから中央アジアに向けてのルートを構築する予定なのである。更にそれを発展させると、インドからイラン、さらにコーカサス、中央アジア、ロシア、北ヨーロッパを結ぶ南北交通回廊(NSTC)に繋がるようになるのである。その為にも、インドは米国からの制裁が仮にあっても、それを気にせずこのプロジェクトを推し進めて行く意向のようだ。(参照:「
HispanTV」)
あくまでも「自国の利益」を最優先し、地政学をも利用してアメリカともロシアとも渡り合うインド。対して日本は「米国日本州」としての立場から脱皮することもできず、カネをばら撒くだけの外交である。盛んに外遊する安倍首相だが、モディのように自国の立場と国際関係を俯瞰してみた一貫性のある外交ではなく、せいぜいばら撒きの結果、一本釣り外交で終わる。中南米にも安倍首相は二度訪問しているが、その後ほとんど進展がないのがその証左である。
日本には、一貫性があり多角的な外交をできる人材(政治家及び外交完了)が決定的に不足している。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身