誰も気づいていない民泊の「社会貢献」的可能性~金欠フリーライター、民泊を始める(4)

民泊イメージ

※写真はイメージです ABC / PIXTA(ピクスタ)

誰も気づいていない民泊の潜在能力の話

 運営していた民泊をたたまざるを得なくなった6月中旬(前回参照〉。数か月ぶりのバンコクに降り立った私は、いつも通り空港から歯科へ直行し、その後予約していた宿にチェックインした。  ところで、「新・観光立国論」「新・所得倍増論」などの著者デービッド・アトキンソン氏は、数年来の友人である。10月3日に上梓した拙著「貧困脱出マニュアル」にも推薦を寄せてくれた。彼との出会いは某媒体のインタビューだった。  編集者の要望は、「もしアトキンソンさんの日本語が少しでも怪しくなったらすぐ英語に切り替えてください」だったが、そんな必要は一切なかった。筆者よりも数段早口の日本語で日本の古典や文化財について滔々と喋りまくり、口を挟むすきすら与えてくれなかった。  そんな彼が、二条城の「学芸員」を手厳しく批判した。「あの人たちは頭が固くて、二条城を自分たちだけのものにしてきちんと稼いでいない」そのとき筆者はこう返した。 「それ、“頭が固い”んじゃないんですよ。“頭が悪い”んですよ。」  一通り取材が終わり、デービッドは呆然とした口調で筆者に聞いてきた。 「まさか、日本人で私より過激なことを言う人がいるとは……ひょっとして、そろそろ移住を考えてませんか?」  実を言うと、バンコク移住という一手も考えてみた。  今のところタイ語は全然わからないが、ポリグロット(多言語話者)の筆者なら一年か二年で何とかなるだろう。何度も来て土地勘もあり、外国人が馴染みやすい風土で、一年中温暖な気候でもある。ちょっとしたコンドミニアムならプールも使い放題だ。  何より、筆者はサラリーマンではない。パソコン一台あれば原稿はどこでも書ける。編集者との打ち合わせもスカイプのビデオ会議でも使えばなんとでもなる。友人も結構いるし、今まで通り民泊をすれば最低限の生活の糧は稼げる。  ただ……タイにはしたたかな一面もある。外国人は土地を所有できない。会社でも、株式を51%以上持つことができない。なんのかんのと上手いことタイ人を保護するようにできているのだ。  筆者からみれば、タイが東南アジアで唯一独立を保てたのは偶然ではない。何かの拍子に今回以上のどんでん返しを喰らう恐れは排除できなかった。  実際、今回の民泊騒動で日本に嫌気がさし、フィリピン移住を決めた民泊ホストの友人夫妻もいる。今のところフィリピンはそちら方面の規制はユルユルだという。英語は公用語だから、筆者は何の問題もなく暮らせる。  ただ、フィリピンは土地勘がない。友人もほとんどいない。今一つ決め手に欠けた。  やはり、日本でやるか……色々考えてみたが、「民泊事業をやめる」という選択肢は全く浮かばなかった。そのとき、ふと閃いた。  結局、この問題は「地主に頭を下げなければいけない」という一点に尽きるのだ。ならば、筆者自身が土地付きの一軒家を購入して、今回の法律を逆手にとって全て条件を整えて認可をとれば誰にも文句をつけられないはずではないか。  したがって、この話を実現するには分譲マンションではダメだ。借地権つきの家でもダメだ。やはり地主に頭を下げなければならないからだ。  考えてみれば、ここ数年家賃として毎月12万円を問題なく支払えている。それなら、頭金百万円で住宅ローンを組めさえすれば払えないはずがない。
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誰も気づいていない民泊の「社会貢献」的側面
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