民泊新法施行後に、金欠フリーライターが新築5LDKを購入し民泊を始めてみた<第一回>

タカ大丸
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訳書がヒットしたとはいえ、基本的に金欠のフリーランスライターが一念発起して一軒家を購入。民泊事業に乗り出したが……(写真はイメージです。筆者とAirbnbに何ら提携関係はありません)

 2018年6月。民泊新法が施行となり、言うまでもなく民泊の状況は激動した。そして、しがないフリーライターである筆者自身の人生も大きく変わった。  Airbnbが米国で創業したのが2007年で、日本支社を設立したのが2014年5月である。筆者も、2015年末から自宅を用いてエアビー(Airbnb)事業を開始していたのだ。  おかげさまで好評を得て順調に伸びていったが、「民泊新法」の施行が決まり、今まで年間無制限で家に泊められたものが180日の制限がかかることになったのだ。それまでは何の登録も申請も必要なかったのだが、6月15日以降は正式な登録をしなければ民泊事業をできないということになった。  そうして紆余曲折の末、2018年9月12日、千葉県知事より民泊登録完了の証明が届く。これで筆者は合法的に民泊事業を運営できることとなった。  それまでの全記録を、ここで数回に渡ってお伝えする。一連の過程には、日本の問題が全て浮き彫りとなっているので、ぜひお付き合いいただきたい。

事前準備さえすればトラブルは少ない

 まず、筆者にとって民泊とは「いいことしかない」。収入が増えて家賃・光熱費が民泊の売り上げだけでまかなえるようになり、不安定な文筆活動をする者にとってこれほどありがたいことはない。  よく「近隣トラブルが」という人がいるが、筆者は当時の家へ入居する際に隣三軒に菓子折りをもって挨拶に行っており、苦情も皆無だった。それどころか近所の酔っぱらいおじさんが玄関まで外国人ゲストを連れてきてくれたこともあったし、警官が案内してくれたこともあった。 「騒音」問題について言うと、エアビーにおいてはホストとゲストの双方がレビューを書くことになっており、言って見れば相互監視している状態でレビューは全世界に公開される。もし夜騒がしくしてホストの不興を買ったら、今後ほかのエアビー物件に泊まれなくなるのだ。 「安全・防犯」も同じである。女子大生一人が我が家に泊まったことが何度もあったが、万一手を出したら通報され、これも書き込まれる。だから残念ながら色っぽい話は皆無である。同じ意味でゲストが筆者のパソコンなり財布なりを盗んだとすれば、何日に誰が泊まっていたかすぐにわかり、足がつくわけで、そんな見え透いたことをする人など一人もいない。  ほかにも、民泊の良さがある。「平和促進」である。  数年前から、韓国のバッシング・ヘイト本が何冊かベストセラーになった。ここで忘れてはいけないのは、出版事業・ジャーナリズムも商売の一つということである。  韓国のヘイト本を出版社が出すのは、売れると思っているからだ。必ずしも、著者や編集者が韓国嫌いだからとは限らない。実際、そんな編集者の多くは夜になると会社の経費で焼肉を食っていたりする。実際、筆者のところにも「今なら韓国を叩けば売れるんですがね」と編集者からオファーがきたことがあった。  しかし、私にはセルビア人の友人が数多くいる。彼らが異口同音に言うのは「ジャーナリストは戦争を始めることができる」である。  火のないところにボヤを起こし、煽り立てることができるのがジャーナリストという生き物だ。そして、そんな商売で出しているだけの本を真に受けてしまう人が一定数いるのもまた事実である。そうやって憎悪が広がり、取り返しのつかない事態に陥ってしまったのが旧ユーゴスラヴィア、バルカン半島だった。  もし筆者に民泊の収入がなければ、生活苦からヘイト本に手を染めていたかもしれない。そしてなまじ文章力と営業力は人並み以上にあるから、15万部売れた筆者の訳書「ジョコビッチの生まれ変わる食事」(三五館/現在扶桑社より新装版が発売)以上のベストセラーにしてしまえるかもしれない。  幸い筆者には民泊事業からの収入があり、そういう良心に反する書籍に手を染めなくて済んだ。信念を貫くには、もう一つの収入源が必要不可欠なのだ。  もう一つの美点がある。「芸術支援」である。  ハングリー精神などクソの役にも立たない。本当にハングリーな人には、夢も可能性もないのだ。衣食足って礼節を知る。最低限の基盤がなければ、そもそもスタートラインに立てないのだ。  文芸も含む芸術活動も同じである。今月末の家賃をどうするか、あるいは今晩の食事をどうするか、と悩みながら芸術に集中などできるはずがない。筆者が「ジョコビッチ」を手がけられたのも、民泊その他による収入があったからだ。  なにも文芸だけに限らない。音楽でも、絵画でも、彫刻でも、ちょっと頭が回る芸術家が自宅で民泊事業をやれば金銭的不安から解放され、作品に集中できるようになる。やってみればわかるが、宿泊するゲストが日中に家に滞在することはほとんどない。物珍しい外国に来ているわけだから、色々目新しいものを観光したいに決まっている。  言い換えると、日中は何も仕事がないわけで、その時間で芸術作品に力を注げばよい。他のバイトをしながらそういった時間と集中力を確保するのは、並大抵のことではない。  ミュージシャンがもっと民泊事業をやれば、三十代半ばになってから急に「ファイト・ソング」で売れ始めたレイチェル・プラッテンのような存在を日本でもっと生み出せるかもしれないではないか。現に「ジョコビッチ」書籍で15万部近いベストセラーを生み出したわけだから、十分にありえる話だ。
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個人のエアビー経営者を焼き尽くした「悪魔の6月2日」
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※本連載では、今回人生が激変した民泊ホストの声を募集しております。ぜひ、こちらからご一報ください。hbo.q@fusosha.co.jp

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