対米交渉で農業を犠牲にして自動車を優先する安倍三選内閣。「国民騙し」のTAGを許すな

農業を人身御供で米国に差し出す

 日本の対米貿易収支黒字額は2017年で7兆円であり、このうち自動車輸出額は4.6兆円であって、黒字額の66%を占め、これが貿易赤字の主因である。安倍内閣になってからの5年間(2013─17年)で、円の対ドル相場は約39%の円安(円の切下げ)であって、日本の自動車業界は大幅な利益を享受し、とくに対米輸出はこの5年間で53%も増えている(2012年3兆円から17年は4.6兆円に増加)。  この異常な増加に対して米国は、「日本の自動車輸入に25%の関税をかける」と発言し、さらに米国は「日本は米国の農産物輸入関税を引き下げろ」と主張している。  これに対して日本政府は、「農産物に対する関税はTPPなどで約束した水準まで下げるから、自動車への関税は止めてほしい」と嘆願した。ところが10月4日になって米国のバーデユー米農務長官は、「日本との通商交渉で、日本と欧州連合(EU)が署名した経済連携協定(EPA)以上の農産物関税引き下げを求める」と演説し、さらに「われわれは日本を守っている、(貿易で)他国にできることをなぜ日本は米国にできないのか」と反論している。  9月30日にNAFTAの改訂合意内容が発表された。これによると、メキシコとカナダが関税ゼロで米国に輸出できる自動車は、「域内での部品調達比率の引き上げ(62.5%から75%へ)と時給16ドル以上の地域で生産した割合が40%以上」で生産されたうえで年260万台に制限され、同部品にも輸出金額に制限が付けられた。  農産物ではカナダが「TPPで米国に約束した輸入割当枠を復活する」形で設けたにとどまった。TPP11とEPAで署名した農産物関税引き下げが実現すれば、日本はコメや酪農等で甚大な影響を受けて主要国で最も低い食料自給率(カロリーベースで38%)がさらに低下することが明確になっているのに、対米交渉で、TPP11とEPA並みの関税引下げを差し出してまで、円安で多額の利益を得た自動車を守らなければならないのか。  NAFTAと同様に対米黒字の主因である自動車だけで対米黒字を調整すべきではないか大きな疑問だ。

食料問題は日本の「安全保障」の問題

 食料は天変地異や国際的な紛争で一挙になくなってしまう。とくに食料自給率の低い日本のリスクは大きい。大儲けした自動車優遇でよいのか、食料安保を優先すべきではないか。  国民が選挙で判断すべきである。 <文/菊池英博> エコノミスト。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)を経て1995年文京女子大学教授に。現在は日本金融財政研究所所長 提供元/月刊日本編集部 げっかんにっぽん●「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。
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月刊日本2018年11月号

特集1【安倍政権の終わりの始まり】
特集2【御用メディアの大罪】
特集3【靖国神社はだれのためにあるか】
【特別インタビュー】田中愛治 「たくましい知性」を社会に送り出す


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