あの「蔦屋書店」が参考にした、台湾の大人気店「誠品」が日本初出店へ! 果たしてどういう店舗になる?

各地へのチェーン展開はあり?

 そして、もう1つ気になるのは、今後「誠品書店」が日本各地へとチェーン展開されていくのか?ということだ。  先述した通り、今回設立された「誠品生活MF」は誠品生活と三井不動産が出資する合弁企業だ。また、書籍部門には有隣堂書店が関わっているため、今後の店舗展開としては、有隣堂書店の出店エリアである首都圏周辺に立地する三井不動産運営の商業施設への新規出店が予想されるほか、「ららぽーと」などに出店する有隣堂の既存店が誠品へと業態転換される可能性もあろう。
ららぽーと湘南平塚

三井系商業施設に出店する有隣堂はいくつかあるが…。(ららぽーと湘南平塚、平塚市)

 さて、有隣堂が運営する「最新型複合書店」として思い出されるのが、今年3月に開業したばかりの東京ミッドタウン日比谷にある「日比谷セントラルマーケット」だ。  日比谷セントラルマーケットは東京ミッドタウン日比谷の3階、約783㎡に出店する複合書店で、アジアのストリートマーケットをコンセプトに、小さな路地に床屋、大衆酒場、喫茶店、アパレルショップなどが入り乱れる空間となっている。また「書店」でありながら書籍の販売数はごく少ない上にテーマに沿ってセレクトされたものが殆どで、ベストセラーが置かれている書店とは一線を画した品揃えとなっていることも特徴だ。  当初、日比谷セントラルマーケットは「面白い空間」として話題を呼び、物珍しさから多くの人を集めた。その一方で、「なんでもそろう街にしたかった」という有隣堂の思惑とは裏腹に「欲しいものが何もない」とも言われるようになり、特に周辺のオフィス街から「普通の本」や「普通の文具」を買いに来た客からは「書店じゃなかった…」「高級品しか売ってないなんて」と落胆する声も上がるなど、開業から半年経った現在は飲食店以外での売り上げはそれほど芳しくないように思われる。そのため、将来的には「テコ入れ」のために「誠品書店」へと転換される可能性もないとは言い切れない。  なお、東京ミッドタウン日比谷に隣接する「日比谷シャンテ」にも今年3月に複合書店「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」が出店したばかりだが、こちらもコテージをイメージした「女性のための書店」をコンセプトにしており、日比谷セントラルマーケットほどではないものの一般的な書店の品揃えとは異なる店舗となっている。

有隣堂が運営する東京ミッドタウン日比谷3階「日比谷セントラルマーケット」(千代田区)

 日本初となる誠品の出店まであと約1年。 「書店不況」が叫ばれる昨今ではあるが、台湾からやってくる黒船が伝統の街・日本橋に根づき、そしてアジアとの文化交流拠点として日本全国へと羽ばたいていくことを期待したい。 <取材・撮影・文/若杉優貴(都市商業研究所)> 都市商業研究所 若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken
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