故・翁長雄志前沖縄県知事の県民葬で菅官房長官に投げつけられた罵倒が意味するもの

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写真/時事通信社

菅官房長官への罵倒が意味するもの

「嘘つき!」「帰れ!」「卑怯者!」――。  9日に執り行われた、故・翁長雄志前沖縄県知事の県民葬で、安倍晋三首相の弔辞を代読する菅義偉官房長官には、数々の罵声が浴びせられた。  内地の人々からすれば、「厳粛たるべき葬儀の場で、罵声を浴びせるとはなにごとか」と眉を顰めたくもなる出来事なのかもしれない。  しかし、沖縄知事選の前後、現地を取材して感じた、「菅官房長官の沖縄での嫌われっぷり」から考えれば、あの罵声はむしろ当然の結果だった。  現地で取材して驚いたのは、新しく知事に選出された玉城デニー氏の支持者だけでなく、とりわけ支持する先のない、いわゆる「無党派層」も、そして驚くべきことに、熱心に自民党側の候補である佐喜真淳氏を応援する人でさえも、異口同音に「菅官房長官への怨嗟の声」をあげることだった。  今回の知事選で、自公両党の候補である佐喜真陣営は「対立から対話へ」を標語として戦った。その佐喜真陣営に属する、とある地方政治家は、選挙後のインタビューに「何よりの失敗は、菅さんと佐喜真候補を並べて打ち出したことですよ。熱心に自民党の応援をしている人でさえ、菅さんだけは毛嫌いするのに。菅さんこそが“対立”の象徴だから当然ですよね」と答えてくれた。  菅義偉はこれまで、沖縄からの要望を受け付ける窓口でありながら、「ことごとく沖縄の要求を蹴る」という態度を一貫して示してきた。死の直前に翁長雄志が、政府に対して剥き出しのファイティングポーズを取ったのも無理はない。  知事選で惨敗を喫した佐喜真陣営の選挙は、その菅義偉が取り仕切っていた。おそらく菅には「自公両党の力を結集させる技量は、俺にしかない」という自負があったのだろう。だが自分が沖縄で「対立の象徴」として受け止められている自覚に欠けていた。菅が仕切る以上、沖縄知事選での自民党の敗北は半ば必然だったのだ。
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いまだ沖縄に真摯に向き合わない安倍政権
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