人権侵害や技能実習生の実態に触れず一方的に入管PR。入管による「プロパガンダ」に批判殺到

志葉玲
東京入管

東京入管に抗議する人々(筆者撮影)

死者すら出している入管の医療放置を無視した“入管密着番組”

 法務省・入国管理局(入管)による深刻な人権侵害が繰り返される中、そうした問題に触れず、入管の一方的な主張を取り上げる“入管密着”テレビ番組の放送が各局で相次いでいる。一連の番組は「入管のイメージアップ作戦」ではないかとネット上でも揶揄されているが、入管の人権侵害も国会での論戦のテーマとなりそうだ。

 こうした番組に対して、ツイッターなどSNS上では「食事と夜の時間以外自由」、「訪問診療を日替わりに行っている」等と、入管の主張をそのまま垂れ流したことに批判が相次いでいる。

 実際には、医療についての入管での処遇の悪さは極めて深刻だ。被収容者が体調悪化を訴えても「詐病」とされ、入管側の医者が診療しても痛み止めの薬を処方するだけ、という事例が数限りない。入管側が適切な医療を受けさせなかったために、死亡したという例すらある。以下にその例を列挙する。

●2017年3月、東日本入国管理センター(牛久市)に収容されていたベトナム人Nさんが、くも膜下出血で死亡。Nさんは、収容当初から頭痛を訴え、2日後に口から血を吐き、泡を噴いて失禁。「痛い、痛い」と叫ぶNさんに、見回りの職員はそのたびに「静かにしろ」と言うだけ。結局、1週間Nさんは放置され続け、亡くなった。

●2014年11月、東京入国管理局(品川区)に収容されていたスリランカ人男性Fさんが死亡。Fさんは、亡くなった日の朝8時前から激しい胸の痛みを職員に訴えていた。だが、職員は病院ではなく収容所内の隔離室に移動させるだけだった。13時過ぎ、救急車が呼ばれ病院に運ばれたものの間もなく死亡が確認された。

●2014年3月、東日本入国管理センターに収容されていたカメルーン人の男性が死亡。男性は、同年2月下旬から体調不良を訴えていたにもかかわらず約1カ月放置。同3月27日に血液検査を受けたものの、その後も具体的な医療は受けられず、同30日の朝に死亡。死の直前、男性が苦しむ様子は部屋に設置されたビデオで撮影されていて、職員が観察していた。しかし、29日の動静日誌には「異常なし」と記録されていた。

●2014年3月、イラン人男性が東日本入国管理センターで死亡。入管側は「食事をのどに詰まらせて死亡した」と説明。他方、被収容者への面会を行っている市民団体「牛久の会」に寄せられた証言によれば、男性は「睡眠導入剤、抗うつ剤、痛み止めの過剰投与による弊害が顕著だった」「歩行がふらつき、日中ボーッとしている状態」だったという。

●2013年10月、ロヒンギャ難民のAさんが東京入管内で死亡。Aさんは手をけいれんさせ、口から泡を吹いて倒れた。それにもかかわらず、入管の職員は医者も呼ばずに40分間放置。救急車に出動要請をしたのは1時間後だった。病院搬送後、くも膜下出血による昏睡状態が続き、5日後にAさんは入院先の病院で亡くなった。

 これらの事例は報道や国会質疑でも取り上げられた。つまり、少し調べればすぐにわかることであるのに、“入管密着番組”の取材班はこれらの問題に触れず、入管側の主張を一方的に垂れ流したのだ。

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外国人技能実習制度のブラックさも報じよ

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