なぜ政党の意見に偏りが生まれるのか?<民意をデフォルメする国会5重の壁・第4回>

意思決定のブラックボックス

 政党の意思決定は、外から分かりにくいものとなっています(ここから先は既存の国政政党について説明します)。例えば、政府の働き方改革法案について、裁量労働制の拡大が、2017年の国会提出の直前に、削除されました。与党の自民党と公明党は、それまでの事前審査での議論とまったく異なる結論について、いつどのようなプロセスを経て、転換したのでしょうか。幹部の独断で決めたのか、それとも党内議論の誤りを認めて決めたのか、外部の人からは、正確なプロセスが分かりません。  意思決定の分かりにくさは、与野党を問わず、共通です。行政の政策決定プロセスも、まだまだ不透明な点が多く、加計学園や森友学園の問題のようなことも起きています。それでも、かつてに比べればオープンな方向に向かっていて、審議会の傍聴や議事録の公表、公文書の公開などは進みました。けれども、政党の場合は、結論とその理由は示されるとしても、誰の意見がどのように反映されているのか、プロセスは不透明なままです。途中経過の資料すら、ほとんど公表されません。  人々の意見集約という公的な役割を果たしているにもかかわらず、政党の意思決定は、ブラックボックス状態なのです。政党の外からは、どのような意見を集約しているのか、論理的な議論がなされているのか、分かりません。外部から正確に知ることは、困難です。  そして、ブラックボックスの意思決定が、民意のデフォルメを生む温床になっています。その温床は3つあります。

温床その1)先輩ゼッタイ

 第一の温床は、議員・党員歴の長さを重視する組織文化です。政党には、意見を述べ合い、結論を集約するために様々な会議が設けられていますが、議員等が対等に議論して結論に至ることはほとんどありません。たいていの場合、長く議員等をしている幹部の意向が先にあり、それを忖度しつつ結論を得ます。もちろん、例外はありますが、そのことすら、部外者が見聞できるケースは稀です。  議員歴等の長さが重視されるのは、それが力の源泉と結びついているからです。  第一の源泉は、選挙の強さです。長く議員を務める方が、相対的に選挙で強くなり、選挙運動以外のことに時間やおカネを使えるようになります。  第二の源泉は、党内外の役職です。党幹部になれば、政策や公認での影響力が強くなりますし、大臣などになれば、政府への影響力が強くなります。派閥や団体の幹部になる機会も増え、それらのメンバーに影響力を与えられるようになります。  第三の源泉は、人間関係です。どのような組織でも、古くからいる人ほど、親しさを利用して非公式に影響力を行使できる可能性が高くなります。他の議員や党職員、官僚、団体幹部など、キーパーソンを通じて、水面下で影響力を行使するわけです。  この組織文化は、古い政党である自民党(1955年設立)ほど、色濃くあります。例えば、飲食店の全国チェーンを創業した人でも、議員になれば、それ以前の経歴は党内でほとんど考慮されません。3年前に当選した、社会的な実績の乏しい30歳代の議員の部下になることもあります。
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経団連の意見が採用されやすいのはなぜ?
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