フェデリコ・ガオンの説明によれば、サントスの独断的な判断による決定であるかのようにさせて、4日後に大統領に就任するイヴァン・ドゥケと彼の閣僚をそれに巻き込ませないようにするためのサントスの配慮であろうと指摘している。
というのも、そうしておけば、今回の決定に事前の相談もなかったドゥケが新ためてパレスチナを国家としてその儘承認を続けるか否か検討できるからである。しかし、就任して早々に前任者の決定を覆すことは考えられない。
それによって、イスラエルに味方する福音派の勢力が強いコロンビアで、福音派がイヴァン政権に先任者の決定を覆すように説得するのを一時的にせよ阻止できるとサントスは考えたようである。
この考えの根底にあるのは、FARCとの和平交渉で学んだことであるが、交渉成立には双方が先ず相手の存在を認めることが基本だということ。イスラエルとパレスチナの紛争にもこの基本原理が必要なのである。
ドゥケ大統領は選挙戦中に福音派との会合でエルサレムに大使館を移転することを否定しなかった。その前に検討する用意があると発言していたが、パレスチナを国家として承認した現在、エルサレムに大使館を移すことはそこにパレスチナ国家の首都にするというプランを冒涜することになり、容易には大使館を移転できなくなったのである。つまり、ドゥケ新大統領にとっては、福音派にエルサレムへの大使館移転は難しいと説明する理由ができたのである。もちろん、イスラエルは不快感を顕にしたものの、今後のイスラエルとの親密な関係に大きな変化はないと思われる。
イヴァン・ドゥケは今回大統領に就任する前は上院議員だったが、まだそれは1期目だった。その前は米州開発銀行(IDB)に勤務し、その後アルバ・ロウリベ元大統領の国際外交補佐官を務めていた。即ち、政治家としての経験は浅いのである。
トランプ大統領はイスラエルとパレスチナの紛争解決にパレスチナとヨルダンを併せた連邦国家を提案している。(参照:「
HispanTV」)
しかし、このプランにヨルダンもパレスチナも拒否している。コロンビアがこの問題に協力するには、イスラエルとパレスチナの双方の存在を認めるということが基本。それをサントス前大統領は退任前に急ぎパレスチナ国家を承認することによって双方の和平協定にコロンビアも参加できる体制にし、経験の浅いドゥケ新大統領に「お膳立て」したのである。
<文/白石和幸 photo by
Cancillería del Ecuador via flickr(CC BY-SA 2.0)>