確かに中国と国交を結んだあとの経済取引規模は大きくなるのは間違いない。2009年にエル・サルバドルは中国への輸出は僅か10万6000ドル(1200万円)でしかなかったのが、今では250万ドル(2億7500万円)に拡大している。とはいえ、輸入量もそれに比例して拡大するのである。2009年に僅か3340万ドル(36億7400万円)であったのが、現在6億5500万ドル(720億円)にまで膨らんでいる。これが意味するものは、エル・サルバドルの対中国との貿易収支で赤字が大幅に拡大したことである。(参照:「
Elsalvador」)
しかも、エル・サルバドルから中国への輸出は一次産品に限定されるのに対し、中国からエル・サルバドルへの輸出は二次産品で、価格的に競争力がある。この影響で、エル・サルバドルの場合は自国の繊維産業は中国からの競争力ある輸入品の前に後退しているという。
今回のエル・サルバドルの中国との国交樹立の影響で、「北部三角形の繁栄の為の同盟計画」に参加しているホンジュラスが間接的に被害を受けることになるという。ホンジュラスはこの同盟3か国の中で経済的に米国への依存が最も高い国だからである。貧困と腐敗が高いレベルにあり、米国からの経済支援は他2か国以上に必要としている。
また、ラ・ウニオン港の開発に投資した日本政府も、そこが中国の軍事基地になるのではないかという不安と軍事基地になれば日本は国際協力を破棄する用意があることを在サン・サルバドル日本大使館の樋口大使が現地紙『
LA PRENSA GRAFICA』(8月27日付)を介して述べている。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。