ネオニコチノイド系農薬は、ミツバチ激減との関連性が指摘されている
2013年12月、欧州連合(EU)で3種類のネオニコチノイド系農薬(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)の使用が一時禁止になった。規制に踏み切った背景には、世界中で問題となっている「ミツバチが大量にいなくなる」という現象がある。さらに、欧州食品安全機関(EFSA)は、ネオニコチノイド系農薬(アセタミプリド、イミダクロプリド)の2種類について「低濃度でも人間の脳や神経の発達に悪影響を及ぼす恐れがある」との見解を発表した。
ミツバチだけではなく、人間の脳にも悪影響を及ぼす可能性が指摘されているネオニコチノイド系農薬は、世界中で規制強化が進んでいる。アメリカのオレゴン州では2013年に暫定的な規制措置が始まり、ワシントン州シアトル市議会では2014年9月、ネオニコ系農薬の使用と購入を禁止する決議が全会一致で可決した。
アメリカではさらに、オバマ大統領も「食糧安全保障に不可欠なミツバチなどの減少を食い止める」として、関係省庁で組織する作業部会を設置し、原因の究明や保護対策に乗り出すと発表した。
アジアでも規制が進んでいる。韓国の農村振興庁は前述のネオニコチノイド系農薬3種について、「EUの評価が完了するまで国内の新規および変更登録を制限する」と発表。中国でもネオニコチノイドと性質が似ている浸透性農薬、フィプロニルの使用を規制している。
ミツバチ激減は世界中で問題に。2007年までに北半球の4分の1のミツバチが消えてしまったとの報告もある
このように世界で進むネオニコチノイドの規制強化や、毒性の再評価。しかしこうした動きとは全く逆行して、日本ではネオニコチノイド系農薬クロチアニジンの食品への残留基準が大幅にゆるめられようとしている。
ミツバチへの悪影響だけでなく、人への影響についても報告され、これからさらに研究が進められようとしている中、日本で拙速に残留基準緩和を進めていいのだろうか。現行の日本のクロチアニジンの残留基準値ですら、EUと比べて高い品目が多い。例えばキュウリはEU基準値の100倍、茶葉は71倍、トマトは60倍となっている。
規制緩和を進めている厚生労働省は、一度は市民の声を聞いて、規制緩和の再審議を決定したが、今現在行われているその審議の行方次第では、さらに世界とは真逆の方向に進みかねない。
取材・文/成澤薫(国際環境NGOグリーンピース・ジャパン)
※グリーンピース・ジャパンでは、2014年10月からネオニコチノイド系農薬の使用禁止を求めて署名活動を続けている。⇒http://www.greenpeace.org/japan/ja/Action/nico2/