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「注文住宅」――。
それは多くの人にとっては憧れの最終形態であり、自分で間取りや建材を選べる楽しさからも人気は高い。とは言え、差し押さえ・不動産執行の現場で出会う「注文住宅」は、人々の想像とは程遠い。その残念さ加減も多様だ。
例えば多くの奥様方が憧れるシルバニアファミリーのようなお家。パッと見は可愛らしい洋風作りなのだが、建材が規定フォーマットで日本の環境に適した大量生産品でないことが多く、可愛らしい洋風建築の“本場”とされる国から無理やり日本サイズに合わせたものを輸入する。
すると、10年ほどで窓が開かない、扉の立て付けに不具合が、鍵が回らないといったことが発生する。
これまでに出会った最悪のケースでは、家中の窓が全て開閉不能に陥り、はめ殺しのままという状況のものもあった。
他にも自身のライフスタイルに合わせすぎた家、風呂だけ広い一点豪華主義、ビルトインガレージとダイニングが一体化、二人の愛の巣としてラブラブ手形や記念品を壁や柱に埋め込むも離婚。外光の取り入れを極限まで考え全ての部屋に大きな天窓を用意した家では、雨のたびに滝のような雨漏りに見舞われるというものさえあった。
そんな中、印象的だった物件がある。
「両親に家を建ててやりたい」
親孝行したつもりが逆に、悲しい結果になってしまった注文住宅だ。
物件は狭い敷地面積ではありながらも人気の住宅地内の端。駐車場はないが最寄り駅からは徒歩約20分。
築年数が極めて浅いながらも、差し押さえが入るという不可解な案件だった。
日当たりも悪いということはなく、不動産執行ではお馴染みの湿気も気にならない。建物自体にも外から感じられる欠陥はなく、地盤も良好。
では一体何が問題なのか? 漠然と疑問を感じつつ屋内調査を開始した。