和彫りの人気上昇中のNYでもタトゥーの施術合法化は約20年前のことだった!? 米国・韓国のタトゥー事情

橋本愛喜
和彫りの虎を施術するローサ氏

和彫りの虎を施術する,アメリカのタトゥーアーティスト、ローサ氏

 異常な暑さが続く日本列島。街中では強い夏の日差しのもと、今年も多くのタトゥーが姿を見せている。

 その数は、この10年で目に見えるほど増加した。しかし、「暴力団関係者」というイメージや、単純に他人を「怖い」と思わせる対象になっているという点から、公共の温泉施設やプール、場所によっては海にまで入場制限がなされるなど、国内のタトゥーは、依然として市民権を得られるまでには至っていないのが現状だ。

 タトゥーの受け入れられ方は、国の歴史や社会的背景によって様々だ。今回はタトゥー大国アメリカと、日本と比較的文化の近い韓国における昨今のタトゥー事情を紹介しよう。

 アメリカの調査企業Statistaが昨年発表した資料によると、18歳から69歳のアメリカ人のうち、実に5人に2人が体のどこかに1つ以上のタトゥーを入れているという。

 実際、ニューヨークを歩くと、手足腰はもちろん、顔にまでタトゥーを入れる人ともすれ違うし、警察や医者といった「ユニフォーム組」の袖からも、実に多彩な絵模様が出ているのを目にする。

 現地の病院で、筆者が初めて診察を受けた時のこと。通された小さな部屋で採血を待っていると、突然入って来たアフロの若い男性看護師の腕に、優しく微笑む“御召茶色の女神”を発見。

 当時流行っていたヒップホップを口ずさみ、リズミカルにあれこれ作業し始める「医療従事者の堂々たるタトゥー」に驚きつつも、一向に現れない採血係にイラつきながら、保険会社に請求する医療費の計算をして待ち続けていると、次の瞬間、聞こえてきたのは「さてと」の声。

「今なんて言った」と顔上げた先の彼が次に発したひと言で、イラつきは一瞬にして恐怖へと変わる。

「腕出して」

 微笑みの女神から伸びる注射を見た時の動揺は、高額な治療費がはじき出された時以上のものがあった。

 そんなタトゥーの浸透率が高いアメリカで、昨今トレンドとなっているのが「和彫り」だ。

アメリカで専門店もできている和彫り

 現地では「Japanese Tattoo」として知られる和彫りは、そのデザインや精巧な技術が近年改めて高く評価され、専門店ができたり、腕のいいタトゥーアーティストが専門誌に大きく取り上げられたりするようになった。

 ニューヨークの老舗タトゥーショップRising Dragonのオーナーで、30年以上にわたって様々な人種の肌に和彫りを施してきたタトゥーアーティストのダレン・ローサ氏も、その魅力に心奪われたうちの1人だ。

「Japanese Tattooの魅力は、その絵柄の美しさだけではありません。日本の古い歴史を感じられることも、我々外国人を引きつける要因の1つです。洋彫りにあるシンプルな『カッコいい』や『かわいい』は飽きが来やすいですが、和彫りには歴史が作り上げてきたメッセージや背景、念が感じられ、その謎めいた意味をいつまでも追い続けられるんです」

 若者が集まるユニオンスクウェアやイーストビレッジには、現在多くのタトゥーショップが軒を連ねている。そのくたびれた看板や妖艶なネオンを見ると、はるか昔から店を構えていた雰囲気を感じるが、意外にもニューヨークでは1961年から36年もの間、タトゥーの施術は法律で禁止されていたという。

「当時は私を含め、多くのタトゥーアーティストがアンダーグラウンドで活動していました。それが解禁されたのは1997年。ごく最近のことなんです。現在では、認可団体が開催する衛生や技術に関する講習を受講し、各州の衛生局のライセンスを取得すれば、合法的にタトゥーアーティストとして活動することができます」

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米国でもタトゥーの世間体は良くはない

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