ユニメディア社長・末田真氏
かつてガラケー全盛期に絶頂を極めた企業は数多く存在する。しかし、スマホへの移行期に転身を失敗した企業は戦線の離脱を余儀なくされる企業も少なくない。
ガラケー⇒スマホ転換期に毎年1億円以上の赤字を出すという、どん底から見事にV字回復した企業は何をしたのか?
2001年設立のユニメディアは、社長である末田真氏が在学中にインターネット広告のベンチャーでアルバイトをした経験を元に設立された。当初、彼の目論見どおり、ガラケーをプラットフォームにした成果報酬型の広告事業が大ヒットし、急成長を遂げた。
「05年くらいまでは絶好調だったんです。04年11月に外部資本を入れたんですが、そのため、事業を拡大しよう思ったんですが、それをうまく収益化できなかったことを皮切りに、スマホへの転換期が来て赤字が加速度的に増えていったんですね」
結果、07年~09年にかけて毎年1億円以上の赤字を出すに至る。
「最終的に、あと半年で会社の資金が尽きる……ってところまで来たのが10年4月のことでした」
社長の末田氏に残された道は唯一つ。
「いかに半年で黒字化するか。それを突き詰めて考えることでした」
リーマン・ショック後だったのもあり、外部からの資金調達はできない。できることは事業を伸ばすか、コストを削るかの2つだけだ。
「その2つを半年の中でいかにやりきるか、順序立てて実行していくしかないと腹を据えました」
最初にやったのは、多角化した事業を個別に細分化して、採算が取れている事業部と不採算の事業部に分別することだった。
「組織を分解して、それぞれの粗利構造がわかる単位にまでわけて、各事業を見直したんですね。これを4月に行い、5月に全社的に会社の財務状況を説明して、9月末までに改善しなかったらコストに手を付けるということを宣言したんですね。その後は月次でPLの進捗を細分化した単位ごとに把握しました」
その結果生まれたのが、現在もユニメディアが採用している「ユニット制」という社内の組織制度だ。このユニット制は、かつて20~30人規模の事業部制だったものを、3~10人程度で、上下関係のないフラットな小規模チームでわける組織制度だ。
もちろん、最初はそれでも劇的に改善したわけではなかった。結局、10月の取締役会であと2か月で2千万円分の粗利を改善しなければならないところまでしか辿り着かず、新卒10人を知人の会社に出向させる、いわゆるリストラ的な手法でコストカットをせざるを得なかったという。
コストカットの結果、11年11月には黒字化したものの、会社の姿勢に異論を抱いたユニットのリーダー格の中途採用人材が数人会社を離れていったという。
「それがちょうど、12年の始めのころでした。そのときに、新卒5年目、6年めくらいの若手を並列にする人事を行ったんです。責任者は一人いますが、それも新卒の若手と他社でキャリアもある中途社員とを半数ずつ配置するフラットな構造です。このユニットで、事業計画から意思決定、採算管理まで行います。ユニットと経営陣は直結していて、間に入るマネジメント層はなくしました。この組織改革によって、ユニット制そのものが、うまく回り始めたんです」