そうした状況も踏まえると、この反政府デモは、米国のキューバ移民2世マルコ・ルビオ上院議員が指摘しているように、内戦に発展する危険性がある。(参照:「
Infobae」)
当面、米国と米州機構は前倒し選挙を実施するように要請しているが、オルテガはそれを受け入れる用意はない。また、制裁の実施も検討中だという。以前のように、米国が軍事的に介入して政権の転覆を計るといったプランは最近の米国はもっていない。ベネズエラに軍事介入しないことを見ただけでもそれが理解される。
内戦に近づいている背景には、政治面だけでなく経済面でも深刻な事態にあることが挙げられる。
「経済と社会の発展の為のニカラグア基金(Funides)」は、今後の経済成長はなく、GDPが5.6%まで後退する可能性があると指摘している。(参照:「
La Prensa」)
ニカラグアは地理的に見ると、中米の中間地域に位置しており、そこが紛争中ということで北部のホンジュラス、グアテマラ、エル・サルバドルと南部のコスタリカとパナマとが分断されたような状態になっている。よって、物資の輸送も陸送からフェリーを使っての海上輸送に代わっているという。4月からの紛争で6月半ばまでに2万本のコンテナーの輸送が滞っていた>そうだ。また中米地域だけの商取引だけを見ると40%減少しているという。
さらに、長引く反政府デモの影響で、4月から20%の企業が閉鎖、中米周辺国に金額にして2110万ドル(23億2000万円)の損害をもたらしているという。(参照:「
BBC」)
国民の逃亡も始まっている。移民者の為のキリスト教サービスLea Montesによれば、隣国のコスタリカに移民を希望する人の数が、紛争が始まる前の4月の第一週目の申請者は150人だけだったのが、7月初旬の週で5126人が申請しているとしている。
しかも、地方に開設されていた「移民と出国担当局」が廃止されたため、首都マナグアの同局にパスポートの発行を求める人が殺到しており、泊りがけで申請の為の順番を待っている人もいるという。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。