タイの洞窟遭難騒動の少年たちが「出家」した理由と、その驚くべき「効能」

「出家」すれば刑務所を逃れることも!?

 タイ人が出家をするときはいくつかの理由・動機がある。  人生の節目、家族の不幸(例えば身内の病死や老衰など)、自身の不運、罪の償い、供養などだ。今回の少年らの出家は供養といった事情が当てはまる。タイにおいては出家すればいろいろなことが許される傾向にあり、この少年らの出家はタイでは称賛されている。

出家の期日は自由に決められる。この僧たちは祖父の葬儀のためだけに半日だけ出家した

 出家がどれほどにいい行いと見られるかは罪の償いを動機にする出家を見るとわかりやすい。タイでは罪人も出家すれば刑務所も逃れることができる場合もあるのだ。例えば、2001年に起きた交通事故だ。  ある男性が飲酒運転で信号無視をし、タクシーと衝突した。その男性に大きなけがはなかったが、タクシー運転手と乗客の3人が重傷となり、そのうちの2人が死亡してしまった。  この男性は当時アイドル歌手として人気だった人物で、タイ全土をこのニュースが駆け巡った。ただ、多くのタイ人が驚きよりは「やっぱり」と思ったことだろう。当時彼はアイドルながらもディスコなどでDJをしたりしていたが、それ以前からたびたび飲酒運転で事故を繰り返していたのだ。そして、ついに死亡事故を引き起こした。いわば、「札付き」が起こした事故だったのだ。  衝撃はこのあとにある。結局彼は裁判で4年の有罪判決を受けたものの、出家して反省をしてみせ、その後刑務所には入らなかった。交通違反各種に対する罰金は1.6万バーツ(約5万円)、賠償金も死亡者ひとりにつき47万バーツ(約150万円)程度だ。当時SNSどころかネットもあまり普及していなかったため、この件はそれ以上の発展はなかったし、筆者の記憶が正しければ、事故か判決の直後に遺族はマスコミに対して「彼(加害者のアイドル)は賠償金も払ってくれて出家もしていい人だった」とまで言わせていたほどだ。  その男性は今も俳優として活躍している。2016年には事故被害者の娘がマスコミのインタビューに応じ「今でも生活のバックアップをしてくれて、本当にいい人だ」と言っていた。出家だけで刑務所生活を逃れたのだから当たり前の話であるが、タイではこんなものなのである。  しかも、これは珍しい話ではないのだ。タイの芸能人や政治家など、とにかく悪いことが発覚したらとりあえず出家して反省してみせるということは本当によくあることなのである。ただ、これで刑罰を逃れられるのは、富裕層など元々ある程度の社会的地位があることが最低条件で、普通の貧乏人はそうはいかないのだが。
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異教徒でもタンブンできる懐の広さ
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