死者50人を出した倉敷市真備地区の被害の要因!? 高梁川上流・河本ダムの「異常放水」

横田一

河本ダムの「異常放水」疑惑について「石井国交大臣からは、検証の指示はない」(ダム管理事務所)

小田川(高梁川の支流)の堤防が決壊した倉敷市真備地区の上流にある「河本ダム」(新見市)。ダムからの異常放流と堤防決壊のタイミングが一致、“ダム放流起因説”が浮上している

 堤防決壊で街全体が水没、死者50人という犠牲が出た倉敷市真備地区の西日本豪雨災害が、二重三重の意味で「歴代自民党政権の人災」(嘉田由紀子・前滋賀県知事のコメント)である可能性が出てきた。ダム優先で堤防補強を後回しにしたことに加えて、上流に建設したダムからの「異常放水」が堤防決壊を招いたとの疑いも強まっているからだ。

 ダム問題に長年取り組む「水源開発問題全国連絡会(水源連)」の嶋津暉之共同代表は、こう話す。

「西日本豪雨災害では、上流のダムからの放水で急激に下流の河川の水位が上がってしまい、被害を大きくした可能性がある。これも検証しないとなりません」

 疑いの眼差しが向けられたのは、倉敷市から北へ約40km、高梁川上流にある「河本ダム」(新見市)。このダムを管理する「岡山県高梁川統合管理事務所」(新見市)を訪ねて「石井(啓一)国交大臣から『ダムからの放水が被害の原因だったのかを検証するように』という指示はなかったのですか」と聞くと、担当の森本光信・総統括参事からは意外なコメントが返ってきた。

「石井大臣から『検証するように』との指示はありません」

ダムが放水量を上げるごとに水位が上がったことを示す「三本線」

真備町の被害

堤防決壊で死者50人の犠牲者を出した倉敷市真備地区

 3連休(7月14~16日)に広島・岡山・愛媛3県を視察した石井大臣は17日の会見で、愛媛県肱川上流の野村ダムや鹿野川ダムの放水について、検証の場を設けることを発表した。

 下流域の洪水被害が出た肘川上流にある両ダムの放水操作について、専門家がチェックすることになったのだ。それなのに、同じような「ダム放水起因説」が浮上した岡山県高梁川の河本ダムについては、なぜか検証対象外だったのだ。

 しかも複数のメデイアが、河本ダムからの異常放水と倉敷市真備町地区の堤防決壊のタイミングが一致したことを報じていた。

「西日本豪雨に見るダムの限界 放水急増平時の75倍 倉敷・真備『バックウォーター』に影響か」(7月15日付の『東京新聞』)や「もう放水はしないでくれ 水没の街にみたダム行政の“限界”(西日本豪雨)」(7月16日放送のFNN「報道プライムサンデー」)などだ。

 いずれも、上流に河本ダムがある「高梁川(本流)」と堤防が決壊した「小田川(支流)」の合流地点で「バックウォーター(逆流)現象)が起きたことに注目。「ダムからの異常放水で高梁川が増水(水位上昇)、流量の少ない小田川をせき止めて合流地点で逆流が発生、堤防決壊を招いた」というメカニズムを推定していた。

「報道プライムサンデー」では、河本ダムの異常放水時に高梁川流域にいた取材スタッフが“想定外の増水の恐怖”を現場ルポした後、後日、避難したホテルの窓に三本線が残っていたことも紹介。ダムの放水量を上げるごとに高梁川の氾濫が激しくなり、その水位が三本線として残った可能性を示唆した後、京都大学名誉教授(河川工学)の今本博健氏がこう解説をした。

「河本ダムはそれなりの働きはしているのです。だけど被害を食い止めることができなかった、これがダムの限界です。国交省は、ともかくダムを優先して造るということで、強い堤防を造ることを後回しにしてきているのです」

 これは二重の意味での「人災」なのではないか。人命を守る“最終防衛線”の堤防補強がダム優先で後回しになったうえ、ダムからの異常放水が脆弱な堤防決壊を招いたとの疑いが出てくる。

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ダムは下流域には無力

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