高齢になってもなお、“子育て”を強いられ死ぬまで苦しむ老人たち<競売事例から見える世界9>

中年の息子、娘の世話を強いられ共倒れ

 それでもなんとかやりくりしようと、方々から金を借りては少しずつ返すという自転車操業を続けていたのだが、次男が自殺。債務者も返済に対する意欲を徐々に失い我々がやってくるに至った。  室内は整頓されており、様々なスポーツ大会で得られた賞状やトロフィーが誇らしげに並ぶ。 「まさか自分がこんなことになるなんて考えてもみなかったよ」  破産や不健康とは無縁にあるはずだった生活のほころびという嘆きは、誰にぶつけるでもなく誇らしげな品々に染み込んでいった。  増築部分の確認に入ろうとDIYで取り付けられた扉に手をかけると、「そこは覗かないで欲しい」と債務者からの申し出が。  聞けば中には40代後半を迎える長男が鬱状態のまま動けなくなっているため、見せたくないのだという。  この事案に代表されるような30代後半から50代前半となる息子や娘の、“子育て”を今も強いられている高齢者がバタバタと倒れている。  倒れていることが確認できる案件だけでも一定数が定期的に発生することを考えると、予備軍と呼べる家庭が相当数あることも想像に難くない。  氷河期世代を中心とした「ミッシングワーカー」という言葉が注目されつつあるが、心身の健康不健康を問わず、就職どころか職探し自体から遠く離れた状況にある中高年を救う手立てはない。  もちろん重くなった身体でもたれかかる彼らの支えから逃れられない高齢父母たちを救う手立てもない。  圧倒的な高齢者の数と彼らに対する負担への不安が「社会問題」と一方的に捉えられがちだが、社会の少し下の方に目を向けてみると、実はまだ現役で働き続ける高齢者のおかげで社会はなんとかバランスを保っていることが見えてくる。  すべての高齢者へ闇雲なバッシングの刃を向ける前に、彼ら一人ひとりが置かれている状況に目や耳を傾け、現状の労働体制や消費形態を少しでも長く維持できるよう配慮していくことが、“転ばぬ先の杖”となるのではないだろうか。 【ニポポ(from トンガリキッズ)】 ライターの傍ら、債務者の不動産を競売にかける『不動産執行』のサポートも行う。2005年トンガリキッズのメンバーとしてスーパーマリオブラザーズ楽曲をフィーチャーした「B-dash!」のスマッシュヒットで40万枚以上のセールスとプラチナディスクを受賞。また、北朝鮮やカルト教団施設などの潜入ルポ、昭和グッズ、珍品コレクションを披露するイベント、週刊誌やWeb媒体での執筆活動、動画配信でも精力的に活動中。 Twitter:@tongarikids オフィシャルブログ:団塊ジュニアランド! 動画サイト:超ニポポの怪しい動画ワールド!
全国の競売情報を収集するグループ。その事例から見えてくるものをお伝えして行きます。
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