肝炎大国中国、画期的な新薬登場で根強く残る肝炎キャリアへの偏見は減るか?

中国人は強い思い込みから食わず嫌いすることも多いが短時間で180度変わりハマる人も多い

 今年5月末に中国企業が開発したB型肝炎の革新的な新薬が中国を始め世界中で発売されたと国営『新華社』などで大々的に報じられて話題となった。  というのも中国はB型肝炎大国で、2011年同じく新華社が伝えた報道では患者の数は約9300万人、実に中国人14人に1人がB型肝炎キャリアだった。海外の人権団体の発表では、1億4000万人を超え国民10人に1人との推計も発表されるなど中国はB型肝炎に長年苦しんできた。  日本でも肝炎の新薬登場で肝炎ウィルス増殖を抑え劇的に症状を緩和させることができるようになっており、中国でも近年は増加傾向に歯止めがかかり減少へ転じている。しかし、キャリアがあまりにも多いためB型肝炎についての偏見や迷信からくる差別が社会問題となってきた。

B型肝炎キャリアだと就職差別も

 驚くべきことにかつての中国では、会社へ就職するときにB型肝炎キャリアだと分かると内定が取り消されたり、就業中にキャリアだと判明すると解雇されることが日常茶飯事だった。大手企業や外資企業でも同様で、あまりにもB型肝炎キャリアへの差別がひどいので、中国政府は、2008年1月1日にB型肝炎キャリアを理由に内定取り消しや解雇を禁止する法律を施行するほどだった。施行から10年経った今でも、B型肝炎キャリアへの差別は根強く、同じ空間にいるだけで空気感染するなどの誤った情報を信じ込んでいる中国人はいまだに少なくない。  同じような例にHIVがある。中国では、街中でHIVの感染防止を呼びかける標語を掲げたり、コンビニエンスストアでもレジ横の目立つ場所にコンドームが置かれているなど一般的な中国人のHIVに対する感染予防意識は日本人より高い。  しかし、その一方で大手の地方新聞がHIVは100パーセント母子感染するとも受け取れるような記事を載せたりする状態でHIVは高確率で母子感染すると思い込んでいる中国人も多い。「ユニセフ」によると適切な予防策を講じれば母子感染率は2パーセントとされるにも関わらず、である。  経済が劇的に発展した現代中国においても、目に見えないものを恐れを抱く傾向はいまだに根強く、最近では、東日本大震災直後に東京にいた中国人留学生が一斉に帰国したことがあった。留学生の親が放射能を恐れて帰国させたものだった。当時の中国では放射能汚染を防ぐためには塩が有効とのデマが流れ塩の買い占め騒動が起こったほどだ。
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