「西日本の豪雨災害は、代々の自民党政権による人災」河川政策の専門家、嘉田由紀子・前滋賀県知事が指摘

横田一
倉敷市真備地区

現地視察中の草島進一市議撮影=倉敷市真備地区

 西日本を襲った歴史的な豪雨災害。今回、被害が大きくなった大きな要因に「代々の自民党政権による人災がある」と一刀両断にするのは、河川政策の専門家で日本初の流域治水条例をつくった嘉田由紀子・前滋賀県知事。倉敷市真備地区が堤防決壊で水没、死者50人の被害を出した原因についてこう話す。

「水没した真備地区はもともと、ハザードマップ(被害予測地図)で2~5mの浸水が予想された危険区域でした。『これだけ危ないですよ』という具合に、浸水リスクを住民に十分に知らせ、避難を促すワークショップを開催するなど、避難行動を“自分ごと化”することができていなかったのでは。また、行政として最も防がないといけない堤防決壊への対策、堤防補強も不十分だったのではないでしょうか」

 ハザードマップが物語る浸水リスクを受け止めて対策を打たないといけなかったのだが、それが不十分であったというわけだ。諸悪の根源は、「ダム建設を最優先にして堤防補強を後回しにしてきた、歴代自民党政権の河川政策にある」と嘉田氏は指摘する。

「滋賀県知事になる頃から『矢板やコンクリートで周りを囲む、アーマーレビー工法で鎧型堤防にして補強すべき』と国に提案してきたのですが、歴代の自民党政権は『鎧型堤防は当てにならない。堤防補強よりもダム建設だ』と言ってきたのです。

 この河川政策が、今回の豪雨災害でも大きな被害をもたらしました。倉敷市真備地区では高梁川の支流の小田川などで堤防が決壊しています。本来は、この地区の堤防補強が最優先課題だったのです」

早く、費用も少なく整備できる堤防補強を後回しにし、ダム建設を優先させた

――マスコミには「本流と支流の河川の合流地点での逆流が原因」という専門家のコメントが出ています。

嘉田氏:「本流(高梁川)の水量が多いから、支流(小田川)に逆流する」というのは河川工学の教科書に載っている基本のことです。当然、逆流による浸水リスクは予測できたのだから、決壊回避するための堤防補強が緊急課題だったのです。「合流地点を下流に移す計画が予定されていた」との報道もありましたが、その間の豪雨災害のリスクを無視するものといえます。

 水没危険区域ではとにかく堤防強化をして、水が溢れても破堤しないようにすることが不可欠です。堤防の決壊とオーバーフロー(越水)では被害が全然違います。オーバーフローをして堤防の反対側がえぐられて決壊するので、矢板やコンクリートで堤防を鎧のように補強しておけば、越水はしても決壊は防げる。

 補強費用もダム建設に比べたら遥かに早く、安価で整備できます。だからダム建設よりも堤防補強を優先すべきと言い続けてきたのです。

安倍首相の倉敷市訪問=草島進一市議撮影

安倍首相の倉敷市訪問=草島進一市議撮影

――なぜ歴代自民党政権は優先順位逆転の河川政策を止めず、堤防補強を後回しにしてきたのですか。

嘉田氏:ダム建設をめぐる政官業のトライアングル、自民党国会議員と国交官僚とゼネコンの癒着の産物です。ダム建設で儲かるゼネコン、献金を受ける自民党、そして巨額の予算を確保できる国交官僚の利害が一致、優先順位が逆転した河川政策が未だに続いているのです。「ダムさえできれば、住民は枕を高くして寝ていれる」という“ダム安全神話”を国交省はばらまいてきたのです。

 その結果、限られた河川予算が有効に使われず、浸水危険区域の堤防補強が後回しになってしまった。今こそ、治水効果が限定的な不要不急のダム建設を凍結、緊急に進めるべき堤防補強予算を増やすべきです。

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3年前の鬼怒川水害の教訓活かされず

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