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不動産執行の現場では債務者が郵送での書面や、電話連絡、直接訪問の呼びかけにも全く応答しないため、強制的に「解錠」「鍵開け」のうえ内部に踏み入ることがある。
最近では4件に1件程度が鍵開けという状況が続いている。
このような鍵開け事件の場合は、執行官に不動産鑑定士という定番のコンビに加え、鍵開け師さんと立会人が加わる。
立会人は呼びかけから鍵開けまでの流れに問題がないか、人がいない室内で窃盗や傷つけの発生が無いかという点をチェックする。
私の知る限りほぼ全ての立会人が元警察官という職歴の持ち主だ。
鍵開け師さんはと言えば新たな業者がポツポツと参入しては来るのだが、スキル不足のためなかなか居つけず、結果的に“いつもの人”が数人で仕事を回している。
鍵開け案件では様々なトラブルが発生したりもするのだが、少々「可哀想だなぁ」と思ってしまうのが、本人に全く落ち度のない占有者がいる物件への執行だ。
具体的に言うと、賃貸物件のオーナーが借りたカネを焦げ付かせてしまい、物件の借り主さんの元へ踏み込むという案件だ。
この借り主さんで最後の最後までこちらの呼びかけに応じないパターンに多く見受けられるのが、何故か女性。
というわけで、今回ご紹介する案件も鍵を開けてみたら占有者の女性が出てきたという事案だ。
快速電車の停車は無いものの通勤にも便利な某駅より徒歩5分以内の賃貸用アパート。駅チカではありながらも、場所は奥まったフラッグ形状地で駐車場は無い。
3階建てで1Kの一人暮らしサイズの部屋が並ぶアパートと集合住宅にしては小規模だが、通いの管理人がメンテンナスをしているため手入れは行き届いている。
この3階にある中央の部屋を所有するオーナーが何らかの支払いを滞らせたため、債権者からの競売が入り、借り主である女性の部屋に立ち入り調査をしなければならないという寸法だ。
管理人に執行の説明をし、部屋の前で執拗に声がけを行うも占有者からの応答は無い。
内部の物音や電気メーターの周り具合からも占有者の滞在が疑わしかったため、緊張が走る。
なお築年数がある程度経過しているような集合住宅ではドアスコープ(誰が来たか部屋の内側から外を覗ける部分)がお馴染みかと思うが、鍵開けはこのドアスコープをクルクルと外側から外すと、そこから専用器具をねじ込み、恐ろしいほどすばやく鍵開けが完了してしまう。