現実をきちんと認識できない統合失調症患者も、悪徳業者のカモになる
「統合失調症」。
過去には精神分裂病とも呼ばれており、他者との感覚や行動における歪みという特徴がある精神障害の一つ。昨今ではインターネット上を中心に「糖質」と揶揄されることもある。
その症状は実に個性豊かで独自の主張や特異な言動などがありながらも、各々が生活力を有していたりもするため、周囲からは“変な人”、“扱いづらい人”といった印象で拒絶や隔離の対象となっている場合も多い。また、自身の選択で外界との接触を遮断しているケースもある。
このような統合失調症を抱える人物とは、差し押さえ・不動産執行の現場でも度々出会うことがある。
ちなみに統合失調症債務者の不動産執行の場合は、事前に債務者が統合失調症であるということがチーム全員に告知される。
今回紹介する事例の物件は最寄り駅から約20分というのどかな住宅地の一角。前述の通り債務者は長らく統合失調症との告知。また、例によって当該物件は日当たりが悪く、苔やカビが気になる。
とは言えこの物件を目の当たりにした際、我々以外に苔やカビを気にする人は少ないかもしれない。
というのも、隣家との境界に鉄条網や鉄杭などで物々しいバリケードが築かれている方が遥かに“気になる”からだ。
債務者は某落語家と某ミュージシャンの大ファンだそうで、年の頃はそろそろ還暦にも手が届こうかという女性。
普段であればこのような個人的な趣味趣向の情報は入ってこないのだが、この現場では債務者の趣味趣向が少なからず事案に干渉していた。
この物件が抱える物騒な外観とは裏腹に、内部は極めて整然としていたため調査は思いの外順調に進んだ。そして物騒になってしまった外観の根拠としては、隣家住人達からの“攻撃”といったことが口にされた。
当該物件の調査後に隣家へ意見を求めに行くと、債務者が訴えるような“攻撃”の形跡はなく、代わりに隣家住人が見せてくれた通報履歴などからも、隣家住人の証言の方に正当性が大きいように思えた。