EU、ECB、IMFのトロイカからの金融支援が終了したギリシャを待つ、茨の道

白石和幸

景色は風光明媚だが…… photo by Mariamichelle via pixabay(CC0 Creative Commons)

 2010年から3度にわたって金融支援を受けて来たギリシャが8月から自力による再建を目指すことになる。即ち、トロイカ(EU、ECB、IMF)からの金融支援に終止符が打たれることになるのである。

 それを、珍しくネクタイを締めた姿のチプラス首相は6月22日議会の演壇に立ち、あたかも“トロイカからの支援から開放されるのだ”、とでも言いたいかのよう国民の前で「2015年に国民の前で約束したことを果たした」と満足げに報告した。

 実際には、これからギリシャは茨の道を歩まねばならないといことを政府は充分に知っているにもかかわらずに、だ。(参照:「Cadena SER」)

ギリシャを待ち受ける茨の道

 第3次金融支援の最後の融資150億ユーロ(1兆9500億円)が近くギリシャに提供されることになっている。これを加えておよそ3000億ユーロ(39兆円)がギリシャに融資されたことになる。それはギリシャGDPの178%を占める金額だ。

 ギリシャがこれから茨の道を歩まねばならなくなるというのは、この3000億ユーロを返済せねばならないからである。その為にトロイカがギリシャに規定していることは2022年まで基礎的財政収支(プライマリーバランス)をGDPの3.5%の黒字に保ち、その後2060年まで毎年同収支を2.2%の黒字で確保するということが要求されているのである。

 これは何を意味するのかと言えば、それは達成不可能だということである。40年以上財政収支を毎年2%以上の黒字に保つということは世界のどの国でも出来ないことである。(参照:「Resumen LatinoAmericano」)

 一方、トロイカは返済金の回収に務め、負債の少なくとも70%が返済されるまで3か月毎に監査員のギリシャ詣でが継続されることになるとしている。(参照:「El Mundo」)

どう考えても無理難題な返済計画

 返済達成の見込みを立たせるには、IMFのラガルド専務理事が以前から指摘しているように、少なくとも負債の大幅な減免が必要だということだ。返済の開始を10年延期して2032年からの返済としているが、GDPがおよそ2000億ドル(21兆6000億円)のギリシャで、しかも危機が始まってからGDPが25%後退した上に3000億ユーロの負債総額というのは余りに巨額なのである。

 財政収支が黒字であるということは、国民の生活に必要な支出が歳入で全て賄われているということを意味するのであるが、ギリシャは、GDPが危機前に比べ25%減少し、失業率は今も20%以上ある国だ。危機が始まってから25万社が倒産したり廃業したりして姿を消している。財政難から年金は14回削減され、国民の平均収入も38%減少しているという。(参照:「Euro EFE」、「Resumen LatinoAmericano」)

 2017年はGDPで輸出が伸びて1.4%の成長を示したとしているが、これまでGDPの10%が輸出だというギリシャはEUの中で輸出規模は最低クラスにある。成長には外貨の獲得が必要であるが、輸出量が余りに少ない。しかも、現状のギリシャでは外国から投資するにも魅力は薄い。実際、危機が始まってから投資は60%減となっている。また。支払い遅延は50%が慣例化している。これではまもともな企業の成長は望めない。(参照:「El Pais」)

 また、これまでの3度のトロイカからの金融支援についても、その10%は公務員の給与、年金、教育、厚生など公共支出に充てられ、残りの90%は借金返済や金利の支払いに向けられていて、国の産業発展の為の投資に回されたことがないのである。(参照:「Resumen LatinoAmericano」)

 よって、財政を黒字化するには歳出の削減しかない。その対象になるのが、例えば、年金の減額である。チプラス政権はそれを今後も実施していかねばならない。また、国有財産の民営化や売却である。その一貫として、ギリシャの最大港ピレウス港は中国のコスコ・グループに売却された。同じく地方の14空港の運営もドイツ企業に売却されている。

 国を発展させる基幹産業が存在せず、現在も外貨獲得の主要産業は観光事業である。このようなギリシャが今後40年余り毎年継続して財政収支を2%以上の黒字にして行くことなど不可能である。

 だから、ギリシャ国民は更に厳しい生活を余儀なくさせられることになるのである。

 そこには、チプラス首相が喜ぶような材料は何ひとつなく、議会で演壇に立ってネクタイを締めたのも、そこには今後も国民は自らの首を絞める道を歩んで行かねばならないということを暗示してのネクタイのように思われる。

<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

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