小泉進次郎ら自民党若手議員による国会改革案や参議院に提出された公職選挙法改正案は「改革の皮を被った党利党略」

田中信一郎

「党内改革派」的な動きで持ち上げるメディアも多い小泉進次郎議員(写真中央)だが…… 写真/時事通信社

 2018年6月、立て続けに2つの国会改革案が、自民党から示されました。一つは、参議院に提出された公職選挙法改正案。もう一つは、自民党の二階俊博幹事長に提出された同党議員による国会改革提言。前者は選挙制度、後者は国会審議に関するもので、内容は異なるものの、国会のあり方に影響を及ぼす点で共通します。

 これらの改革案は、国会の充実をもたらすのか、それとも国会の形骸化を助長するのか。改革といっても、前者に資するのか、それとも後者を促すのかで、賛否を考える人も多いでしょう。とはいえ、選挙制度は複雑で、国会の制度も分かりにくいため、案を見ただけでは判断しにくいと思われます。そこで、国会研究者の視点から、解説します。

自民党の参院選挙改革案は党利党略

 まず、自民党の参院選挙改革案(公職選挙法改正案)です。これは、有権者数の多い参院埼玉選挙区で定数2議席(改選1議席)を増やし、参院比例区で定数4議席(改選2議席)を増やすものです。その上で、比例区の上位2位まで、候補者名の得票数に応じて議席順位を決める(非拘束名簿式)例外の「特定枠」とし、事前に決めた順位(拘束名簿式)で議席を配分するものです。

 このうち、問題は比例区の定数を増やす点です。埼玉選挙区の議席増は、一票の格差を是正するもので、賛否は別にしても理解できるものです。けれども、参院比例区は全国区のため、一票の格差が生じません。

 自民党が、比例区の定数を4議席増加させ、その分だけ特定枠にするのは、合区となって立候補できない候補者を救済するためです。一票の格差を是正するため、鳥取選挙区と島根選挙区、徳島選挙区と高知選挙区は、それぞれ合区され、合計8議席あった定数が4議席になりました。いずれも自民党の強い選挙区で、自民党は実質的に4議席を失った格好となりました。それぞれの自民党県連は、これに強く反発した上に、県連間の候補者調整も紛糾し、党内の大きな火種になっていました。そこで、候補者を降ろす側の県連の候補者を、比例区の上位に位置付け、確実に当選できるようにすることで、党内を調整することにしたのです。

 つまり、もっぱら自民党の党内事情に基づく、参院選挙改革案というわけです。自民党執行部に党内を治める力が足りず、選挙制度を変更することで、党内のもめ事を解決しようとの提案です。党の内部事情を、国家制度に転嫁するのは、党利党略としか表現しようがありません。

 もちろん、国よりも党を優先する選挙制度改革が、国会の充実をもたらすことはありません。なぜならば、国民の利益よりも、党の利益を優先することで選ばれる候補者が、優先的に議席を得てしまうからです。各党には、そうした候補者を比例区に立候補させないようにして欲しいところですが、少なくとも最大政党の自民党においては、動機からして無理な相談です。

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「ある条件」が足されればマシになる

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