今回の大悟館前での取材時間は30~40分ほど。午後2時には終わったが、実は、この後が長かった。
取材後、ジャーナリストや野次馬は少し離れた場所にある喫茶店へ移動。自動車で来ていた筆者はいったん別れて駐車場に向かった。すると、
尾行者が2人ついている。取材活動はすでに終えている。近くに幸福の科学施設は1つもない。筆者はたばこ店の喫煙スペースに逃げ込んだが、尾行者は何度も中を覗きながら店の前を行ったり来たりする。
筆者を尾行してきた人物
これこそ
単なるつきまといだ。迷惑防止条例違反だし、軽犯罪法違反でもある。筆者の110番通報を受けて制服警官が到着。すると尾行者の1人は現場から逃げ、残り1人が警官の職務質問を受けることに。
警察の取調を受ける尾行犯
ほどなく、大悟館前にもいた職員らと教団の弁護士が応援に駆けつけ、尾行犯と警察の間に入ってやり取りを始めた。警察によると、尾行犯は「警備をしていただけ」と主張しているという。教団施設でも何でもないマンションの入り口に立って、何を警備しているのか。なぜ尾行ではない警備をしている人間が、筆者が入ったたばこ店の中を見ながら何度も店の前を通るのか。
一度は筆者と別れたジャーナリストらと野次馬も駆けつけ、つきまとい事件の取材として取材が再開された。
教団の弁護士が警察官を通じて、筆者に対し「警察署内で2人だけで話し合いをしたい」と伝えてきたが、筆者は警察官に、こう伝えた。
「尾行犯がこの場で幸福の科学の人間であることを認め謝罪し、もう二度とやりませんというのであれば収めてもいいが、そうでないなら刑事告訴して事実関係をはっきりさせたい。話し合うことは何もない。この場で認めるのか認めないのか。それだけだ」
弁護士と教団職員らは警察官を通じて「話し合いはしない」と言い残し、現場を立ち去っていった。謝罪の言葉もない。
しかも尾行犯、教団職員、教団の弁護士が一緒に歩いていく。筆者含めジャーナリスト一行は、尾行犯が幸福の科学施設に帰っていくのかどうかを確認するため、「逆尾行」を始めた。その場にいた警察官にその目的を伝え、監視のため警察官も同行した。
尾行に気づいた幸福の科学一行が引き返して来た。警察官に何か訴えている。どうやら筆者たちの尾行を「つきまとい行為だ」と抗議しているようだ。
人様を尾行しておいて、被害者が犯人の正体をつきとめようとすると、これだ。盗人猛々しいとは、まさにこのことだろう。
尾行してきたのが教団と関連した人物かは不明だが、教団職員や教団の弁護士が駆けつけてきた
結局、尾行犯、教団職員、弁護士らは、同じタクシーに乗り込んで去っていった。尾行犯が教団関係者であることは明らかだ。
その後、警察による実況見分(現場検証)が行われた。全て終了したのは夕方6時頃だった。
迷惑防止条例を盾にして取材を妨害する幸福の科学自身が、取材者への報復として迷惑防止条例違反の行為を行なう。ある意味、一貫して「迷惑防止条例」がテーマとなった取材だった。
<取材・文・撮影/藤倉善郎(
やや日刊カルト新聞総裁)・Twitter ID:
@daily_cult>
ふじくらよしろう●1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『
「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)