会社を辞めた人々の出口には「米作り」があった。「誰もが土を耕す」時代は、今よりもっと豊かになる

「誰もが土を耕す」時代は、今よりもずっと豊かな時代になる

アルカディアの里

筆者が、米作りのほか、田んぼ周辺の里山活動を行っている「アルカディアの里」(写真/山口勝則)

 そんなわけで、仕事を辞めよう&辞めたいと思っている老若男女たちが当店に訪れて、落とし穴の入り口を覗き、田んぼという出口に足を踏み入れていった。今、SOSA PROJECT は耕作放棄地となっていた谷津田を1町5反歩(約1万5000㎡)蘇らせて、米作りに勤しんでいる。周辺の里山を綺麗に保つための活動にも、非力ながら取り組んでいる。  この世の中の多くの問題を解決するカギは、より多くの人が自分の食べ物を少しでも土で養うようになることだ。俺は本気でそう思っている。「市民皆農」「市民総自給」を夢見ている。 「半農半X」という言葉も随分と知られてきた。家族の食べ物を少しでも自給しながら、ナリワイを立てて暮らすこと。例えば、以前の俺ならば「半農半“バーのオヤジ”」という感じだ。田んぼに来て目の輝きを取り戻す人々を、これまで幾度となく見てきた。「誰もが土を耕す」時代は、自然環境も人々の人生も、今よりずっと豊かな時代になると確信している。
青木栄作さん(写真/北村土龍)

青木栄作さん(写真/北村土龍)

 SOSA PROJECT の米作りのきっかけを作ってくれた青木栄作さんが、つい先日亡くなられた。  10年前、「米作りがしたいんです」という俺の願いに一つ返事で「いいよ」と言って、その場でスコップと鍬を貸してくれた。耕作放棄地だった田んぼを、その場から復田しはじめた。周辺の里山活動を一緒にさせてもらう機会をいただき、地元の方々や長老と俺たちをつなぎ、地域に溶け込むために最後まで尽力を尽くしてくれた。  青木さんが40年かけて築いてきた「アルカディアの里」。アルカディアとは理想郷を意味する。生前、青木さんがよく言っていた。「お金じゃない、何かできることをここに持ち寄ってくれたなら、誰でも来てくれていいんだよ」。享年68歳。この記事を青木さんに捧げる。こころより感謝を込めて。  アルカディアの里や山々、俺たちが耕す谷津田、集う生き物や人々の笑顔、空からの景色、それらの映像をぜひご覧あれ。天国の青木さん、見えるかな~!? (映像/山口勝則) 【たまTSUKI物語 第3回】 <文/髙坂勝> 1970年生まれ。30歳で大手企業を退社、1人で営む小さなオーガニックバーを開店。今年3月に閉店し、現在は千葉県匝瑳市で「脱会社・脱消費・脱東京」をテーマに、さまざまな試みを行っている。著書に『次の時代を、先に生きる~まだ成長しなければ、ダメだと思っている君へ』(ワニブックス)など。
30歳で脱サラ。国内国外をさすらったのち、池袋の片隅で1人営むOrganic Bar「たまにはTSUKIでも眺めましょ」(通称:たまTSUKI) を週4営業、世間からは「退職者量産Bar」と呼ばれる。休みの日には千葉県匝瑳市で NPO「SOSA PROJECT」を創設して米作りや移住斡旋など地域おこしに取り組む。Barはオリンピックを前に15年目に「卒」業。現在は匝瑳市から「ナリワイ」「半農半X」「脱会社・脱消費・脱東京」「脱・経済成長」をテーマに活動する。(株)Re代表、関東学院経済学部非常勤講師、著書に『次の時代を先に生きる』『減速して自由に生きる』(ともにちくま文庫)など。
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