外国人たちの目には、政治家の発言に対してどう思うかだけではなく、国民がどう行動するべきかが重要だと映っているようだ。二階幹事長が「戦中、戦後」について言及したことについては、次のような意見もあった。
「要約すると、
『昔は文句言ってなかった。だからお前らも文句言うな』って意味でしょ? 自分は政治家として何もする気がないってことじゃないですか(笑)。国会議員たる人は立派な人であってほしいですけど、自分よりよっぽど見識のないオジサンだってわかると悲しくなりますよね。
バカが国を経営していたら、せっせと頑張ってる社員、つまり国民は不幸ですよ。まあ
国民がクビにできるのにしないわけですけど」(ポーランド人・男性・29歳)
また、海外メディアがさまざまなデータを取り上げていたことからもわかるように、個人的な意見を語るのではなく、具体的な政策を示すべきだとの声も。
「発言内容が個人的な印象で、なんのデータにも拠らないところが政治家として残念ですよね。こういうニュースを見て毎回思いますけど、『勝手なことを考える人がいる』というのが問題なのではなくて、そう考えざるを得ない仕組みが問題です。それを
政策で解決して、そういう風に考えなくて大丈夫な状況を作ってあげるのが政治家の仕事じゃないですか。自分がその状況を作れていないことを棚に上げて、文句言う人が勝手というのはおかしいですよ」(同)
政治家と国民の意識の乖離については、『
テレグラフ』の記事でも取り上げられていた。
“二階氏の発言は、支配的なエリート層が日本の日常生活にまったく触れていないという懸念に火をつけるだろう。現実には母親たちは子育てをしながらキャリアを積まねばならず、それと同時に育児施設の不足や職場での男女格差に向き合わなければいけない。そのいっぽうで、日本では3%の男性しか育児休暇をとらず、法的に保障された休みがキャリアに影響を及ぼすのではないかと恐れている”
山積みの問題を前に、毎月のように次々と失言が飛び出す……。そんな状況が改善する気配は一向に感じられない。しかし、これは日本だけでなく、世界でも同じなようだ。
「人の考えを変えるのはスゴく難しいこと。政治家が謝って、結局みんな投票してしまうっていうのは意味がわからない。ただ、これは世界中で起きてることで、どうなろうと人々は気にしないし、自分に影響がないと思ってる。イングランドでも口論になるから公共の場では政治の話をしちゃいけないって風潮があるし、バーによってはそういう話をしちゃいけないってサインを掲げているところもある」(イギリス人・女性・32歳)
’07年の自民党・柳澤伯夫氏による「産む機械」発言から10年以上が経ったが、少子化は深刻さが増すばかり。いっぽうで、議員からの失言も絶えず、発言の主たちも自ら責任をとる様子は見受けられない。
何かが変わらないかぎり、こういった報道が海外メディアを賑わせる状況は、まだまだ続いていきそうだ。
<取材・文・訳/林泰人>