自分を縛る「ふるさと」すら持ち得ぬ人々が、刃物を振り回す時代になった<北条かや>

北条かや
4d8b0b395a0676c617b47ca57f20e55d_s北条かやの「炎上したくないのは、やまやまですが」その29

 元バリキャリの社会派ブロガーとして人気を集め、『自分のアタマで考えよう』(ダイヤモンド社)などのベストセラーで知られるちきりん氏が、こんな発言をしていた。



“「身軽であることの価値」が、ものすごく高まってる。ふるさと、家族、自宅マンション、実家、やめられない仕事含め、動くことを妨げるんだったら持たないほうがいい、みたいになってる。そういうものを持つときは「身軽さを損なわないよね?」という確認が必要になってるというか。”

 自分を縛る実家、持ち家、辞められない仕事。これからの時代はそういうしがらみから解き放たれ、身軽で動きやすいことが重要になってくるという。同ツイートは2018年6月23日現在で2400件近い「いいね」を集めており、意識高い系のインフルエンサーにもRTされている。共感する人は多いようだ。

 ネオリベ的な現代社会のもとでは、軽々と国境を超えて能力を発揮できるグローバルマッチョな人材が「勝者」になる。ちきりん氏の言う「身軽さ」と、専門的な能力を兼ね備えた人材はますます上昇気流に乗っていくのだろう。

「悪い意味でのふるさと」すら持ち得ぬ人々

 一方、「ふるさとや家族をただちに否定するの?」と、疑問を持つ人もいるかもしれない。「ふるさとや家族、仕事は自由を奪うかもしれないが、今の自分を構成しているのはふるさとであり、家族、仕事だから捨てちゃダメだと思う」との反応に見られるように、良い意味での故郷を捨ててはいけないと感じる人は多い。

 ちきりん氏も、その後「『持つべきでない』のは『自分をしばるふるさと』」と述べており、ふるさとのところは「家族」「仕事」などが入ると補足している。故郷や家族、仕事それ自体が悪いのではなく、それが「自分を縛ろうとするものか、それとも、むしろ解き放ってくれるものか」見極めることが重要だという。拠り所になる故郷や人間関係であれば、否定する必要は全くない。

 そりゃそうだろう、というか現実的には「自分を縛ろうとする、悪い意味でのふるさと」すら持てない人が増えているのが実情だ。今、ビジネスで成功を収めている人の多くが温かい家族をもち(男性の場合は大抵、専業主婦の奥さんが家庭を守っている)、子育ての喜びを享受する一方で、むしろ成功していないと感じる人たちは家庭を持つ余裕すらない。「ふるさと」は贅沢品になっている。

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かつては全員が「自分を縛る故郷」を手に入れることができた

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